共有持分だけを売る方法|兄弟の同意なしで売れる仕組みと、売る前に知っておきたい注意点

共有持分だけを売る方法を紹介する記事のアイキャッチ。屋根のある家を点線で左右に分け、オレンジの半分から矢印が外へ出ている図

この記事の結論

共有している不動産でも、自分の持分だけなら、兄弟など他の共有者の同意なしで売ることが法律上認められています。

ただし、持分だけの売却は、物件全体を売るより価格が下がるのが一般的で、売った後は兄弟の側にも影響が出ます。まずは「全員で売る」「共有者に買い取ってもらう」を検討し、それが難しいときの選択肢の一つとして、持分を専門に扱う買取業者に複数社で査定を依頼して比べる、という順番で考えるのがおすすめです。

「兄弟と相続した実家を共有しているが、自分は売りたい。でも兄弟が反対している」。共有名義の不動産では、こうした行き詰まりがよく起こります。兄弟姉妹だけでなく、おじ・おばや甥・姪と共有しているケースも同じです。

この記事では、不動産会社で売買仲介や買取に携わってきた立場から、共有持分を手放す方法を比べ、持分だけを売るときの注意点を解説します。

共有持分を手放すまでの流れの図。遺産分割が済んでいなければ話し合い(協議)をし、まとまれば持分の割合が決まり、まとまらなければ家庭裁判所の調停・審判で決めます。決まっていれば、全員で売る、他の共有者に買い取ってもらう、専門の買取業者に持分だけ売る、のいずれかを選び、まとまらなければ共有物分割の調停・裁判になります。

まず確認:その実家、遺産分割は済んでいますか?

住宅街に建つ、瓦屋根の2階建ての古い一軒家。相続した実家のイメージ
※画像はイメージです

相続した不動産の「共有」には、2つの状態があります。どちらかによって、取れる手段が変わります。

状態どんな状態か話がまとまらないときの手段
遺産分割が済んでいない(遺産共有)相続人全員で誰が何を相続するかを決めていない遺産分割協議 → 家庭裁判所の調停・審判
遺産分割が済み、共有で登記している「兄と弟で2分の1ずつ」などと決めて登記しているこの記事で紹介する3つの方法(まとまらなければ共有物分割の調停・裁判)

表は横にスクロールできます。

遺産分割が済んでいない場合は、まず遺産分割の話し合い(まとまらなければ家庭裁判所の調停・審判)が基本です。遺産分割が済むまでは、原則として後で紹介する「共有物分割」の手続きは使えません(民法第258条の2)。なお、もともと親と叔父などの共有だった不動産で、親の持分を相続した場合などは、相続開始から10年が過ぎると、共有物分割の手続きでまとめて解決できる場合があります(2023年4月施行。それより前に始まった相続にも適用されます)。ただし、相続人から遺産分割の請求があり、共有物分割で進めることに異議が出された場合は、この方法は使えません。弁護士・司法書士に確認してください。

自分の持分は、法務局で取れる登記事項証明書の「権利部(甲区)」で確認できます。「持分2分の1」のように共有者ごとの割合が書かれています。

亡くなった方の名義のままの場合は、持分を売る前に相続登記が必要です。遺産分割がまとまっていなくても、法定相続分(例:相続人が子2人なら2分の1ずつ)での相続登記は、相続人の1人から申請できます。この持分を売ることも法律上は可能ですが、遺産分割が済むまでは権利関係が不安定なため、扱える業者が限られたり価格が下がったりしやすく、事前に弁護士・司法書士に相談することをおすすめします。

2024年4月からは相続登記が義務になりました(相続で取得したことを知った日から3年以内。2024年4月より前の相続でまだ登記していない場合は、2027年3月31日まで)。期限までに遺産分割がまとまらないときは、「相続人申告登記」という簡単な手続きで義務を果たすこともできます。ただし、相続人申告登記では持分は登記されないため、持分を売るには別に相続登記が必要です。また、後で遺産分割がまとまったときは、その日から3年以内に、分割の内容に沿った登記をする必要があります。

共有持分だけなら、他の共有者の同意なしで売れる

共有不動産では、「自分の持分」を売るのか、「物件全体」を売るのかで、必要な条件が大きく違います。

自分の持分だけを売る:同意は不要

共有持分は、各共有者がそれぞれ持っている財産です。そのため、自分の持分だけであれば、他の共有者の同意がなくても売ったり、贈与したりすることが法律上認められています。

物件全体を売る:共有者全員の同意が必要

一方、家や土地そのもの(物件全体)を売るには、共有者全員がそれぞれの持分を売ることになるため、全員の同意が必要です(共有物の変更に全員の同意を求める民法第251条も参照)。1人でも反対すると、物件全体を売ることはできません。

「兄弟が反対しているから売れない」と言われるのは、この物件全体の話です。自分の持分に限れば、話し合いがまとまらなくても出口はあります。

自分の持分だけを売る場合は他の共有者の同意が不要(法律上、同意なしで売れる)で、物件全体を売る場合は共有者全員の同意が必要であることを、家の線画つきで左右に比べた図

共有持分を手放す3つの方法

持分の割合が決まっている共有から抜け出す主な方法は、次の3つです。一般に、①と②のほうが③より手元に残るお金が多くなる場合が多いです。

方法向いている人価格の目安期間の目安
① 全員で物件全体を売る共有者全員が「売る」で合意できる相場に近い価格で売れる可能性が最も高い売り出しから成約まで3〜6か月が一つの目安(合意までの期間は別)
② 他の共有者に持分を買い取ってもらう住み続けたい・持ち続けたい共有者がいる話し合いで決める(客観的な査定額を根拠に)話し合いしだい
③ 専門の買取業者に持分だけ売る
話し合いが難しい場合
共有者と話がまとまらない・関わりたくない持分割合で分けた額より下がるのが一般的業者や状況により数週間〜数か月

表は横にスクロールできます。期間・価格は、運営者の実務経験にもとづく一般的な目安で、物件や状況で大きく変わります。

① 全員で物件全体を売る

相場に近い価格で売れる可能性が最も高い方法です。仲介業者(不動産会社)に依頼して売り、売却代金を持分の割合で分けます。反対している共有者がいる場合も、固定資産税や管理の負担が続くこと、放置すると建物が傷むことを具体的に示すと、考えが変わることがあります。当事者同士で難しければ、弁護士や司法書士などの専門家を交えて話し合う方法もあります。

② 他の共有者に持分を買い取ってもらう

実家に住んでいる兄弟がいる場合などは、その人に自分の持分を買い取ってもらう方法があります。第三者が入らないため、関係がこじれにくい傾向があります。ただし、相手に買い取るお金がないと成立しません。また、時価より著しく低い価格で売ると、差額が贈与とみなされて買った側に贈与税がかかることがあるため、価格は不動産会社の査定など客観的な根拠をもとに決めましょう。

③ 専門の買取業者に持分だけ売る

話し合いがまとまらない、共有者と連絡を取りたくないという場合の選択肢の一つです。共有持分を専門に扱う買取業者であれば、持分だけでも買い取ってもらえることがあり、他の共有者の同意は不要です。条件が合えば、比較的短い期間で売却できる場合もあります。

その代わり、価格は「物件全体の価格×持分割合」より下がるのが一般的です。理由は後の章で説明します。

業者に売ると決めかけたら、よくあるトラブルと業者の選び方を「共有持分の買取業者は大丈夫?」で確認してください。

そのほかの方法

  • 持分を贈与する・放棄する:持分を放棄すると、その持分は他の共有者のものになります(民法第255条)。お金は入りませんが、固定資産税などの負担から離れられます。登記には他の共有者の協力が必要です。また、贈与でも放棄でも、持分を受け取った側に贈与税がかかることがあるため、税理士に確認してください。
  • 相続土地国庫帰属制度:相続した土地を国に引き取ってもらう制度です。共有の土地は共有者全員で申請する必要があり、建物がある土地は対象外などの条件があります。負担金が必要で、承認されない場合もあります。
  • 所在が分からない共有者がいる場合:必要な調査をしても所在が分からない共有者がいるときは、他の共有者が裁判所に申し立てて、その人の持分を取得したり、他の共有者全員が自分の持分を同じ第三者に売ることを条件に、その人の持分もあわせて売れるようにしたりする制度があります。どちらも、裁判所が決めた額(持分の時価をもとにした額)を供託する必要があります(民法第262条の2・第262条の3、2023年4月から)。相続財産の場合は、相続開始から10年が過ぎていることなどの条件があります。「連絡がつかない」だけでは対象にならないこともあるため、弁護士・司法書士に相談してください。

話し合いがまとまらないとき:共有物分割の調停・裁判

①〜③のどれも話がまとまらないときは、裁判所の調停で話し合うか、裁判所に共有物の分割を求めることができます(民法第256条・第258条。共有者の間で「一定期間(最長5年)は分割しない」という約束をしている場合は、その約束した期間は求められません)。共有物分割は、持分の割合を決める手続きではなく、決まっている持分をもとに「物件をどう分けるか」を決める手続きです。相続した実家で、遺産分割が済んでおらず持分の割合そのものが決まっていない場合は、前の章のとおり遺産分割の手続きが先になります。

裁判では、物件そのものを分ける方法や、誰か1人が取得して他の共有者にお金を払う方法(②に近い形)が検討され、それが難しい場合は競売で売って代金を分けることになります。競売は一般に市場で売るより価格が下がりやすく、事案によっては1年以上かかることもあります。時間と弁護士費用がかかるため、他の方法を試してからの手段と考えるのが一般的です。

持分だけを売ると安くなる理由(買取業者の目的)

持分だけを買った業者は、すぐにその不動産を自由に使ったり売ったりできません。業者は買い取った後、次のような方法で利益を出そうとします。

  • 他の共有者に、業者が買った持分を買い取ってもらう
  • 他の共有者から残りの持分を買い取り、物件全体を売る
  • 物件全体の売却を共有者全員でまとめる
  • 話がつかなければ、共有物分割の手続きに進む

この「時間・手間・裁判の費用・まとまらないリスク」を見込んで価格をつけるため、持分の買取価格は、物件全体の価格を持分割合で分けた額より低くなるのが一般的です。

業者が持分を買い取った後の4つの進め方の図。他の共有者に買い取ってもらう、残りの持分を買い取って物件全体を売る、全員でまとめて売る、話がつかなければ共有物分割に進む。そのため買取価格は物件全体の価格×持分割合より低くなるのが一般的

もっとも、実務の感覚でいえば、買取価格は「相場の何割」と一概には言えません。業者ごとに、どこまでリスクを取れるかが違うからです。買い取った後に物件全体をまとめて売りやすい(商品化しやすい)と判断されれば減額は小さく、難しいと判断されれば大きくなります。共有者の人数が多い、連絡のつかない共有者がいるなど、手間がかかる物件は、その手間の分のコストが買取価格に反映されます。業者によって得意・不得意もあります。

価格を少しでも上げるには、1社だけで決めず、複数の業者に査定を依頼して比べることが大切です。業者によって、得意な物件の種類や地域、共有者との交渉の進め方が違うため、提示額に差が出ます。

兄弟に黙って売ったらどうなる?売った後に起きること

持分の売却には同意が不要なので、売る前に他の共有者へ知らせる法律上の義務はありません。ただし、売った後は次のことが起こります。

  • 登記簿の共有者の名前が、買い取った業者に変わります。
  • 業者から他の共有者に、持分の買取や物件全体の売却について連絡が入ります。
  • 実家に住んでいる共有者がいる場合、業者から、自分の持分を超えて使っている分の対価(家賃相当額などをもとにした金額)を求められることがあります(民法第249条。無償で使う取り決めがある場合は別)。
  • 話し合いがまとまらなければ、業者が共有物分割の手続きを起こすこともあります。

つまり、売ったことはいずれ他の共有者に伝わり、兄弟の側にも負担が生じることがあります。関係を大切にしたい場合は、売る前に「話し合いがまとまらなければ持分を売るつもりだ」と伝えておくほうが、後のトラブルを防げます。そのうえで話が進まないときの選択肢の一つが③です。

持分を売るときの流れと必要書類

買取業者に持分を売る場合の一般的な流れは、次のとおりです。

  1. 登記事項証明書で自分の持分割合を確認する
  2. 複数の業者に査定を依頼し、価格と「買い取った後の進め方」を比べる
  3. 売買契約を結ぶ
  4. 代金の受け取りと同時に、持分の移転登記をする(司法書士が手続き)
持分を売るまでの4ステップの図。登記事項証明書で持分割合を確認、複数の業者に査定を依頼して価格と買い取った後の進め方を比べる、売買契約を結ぶ、代金の受け取りと同時に持分の移転登記をする。主な必要書類の注記つき

主な必要書類は、本人確認書類、登記識別情報(権利証)、印鑑証明書、固定資産税の納税通知書などです。業者や物件によって異なるため、依頼先に確認してください。権利証をなくした場合や、登記の住所が今と違う場合も手続きできるので、司法書士に相談してください。

持分を売ったときの税金

持分を売って利益(譲渡所得)が出た場合は、売った翌年の確定申告で税金を納めます。譲渡所得は、共有者ごとに自分の持分に応じて計算します。

譲渡所得は、売った金額から、取得費(買ったときの代金など)と売るためにかかった費用を差し引いて計算します。ここで大きく差が出るのが取得費です。親が買ったときの売買契約書や領収書が残っていれば、その金額をもとに計算できます(建物は、年数に応じて価値が減った分を差し引きます。国税庁 No.3261)。残っておらず、ほかの資料でも買ったときの金額が分からない場合は、売った金額の5%を取得費とする方法(概算取得費)を使うことになり、利益が大きく計算されて税金が高くなることがあります(国税庁 No.3258)。ほかに金額が分かる資料がないかは、税理士や税務署に確認してください。相続した実家を売る予定があれば、まず親の売買契約書や領収書を探しておきましょう。

税率は、売った年の1月1日時点で所有期間が5年を超えるかどうかで変わります(国税庁「土地建物を売ったとき」)。

区分所得税住民税
長期(所有期間5年超)15%5%
短期(所有期間5年以下)30%9%

このほか、所得税額の2.1%の復興特別所得税がかかります(2027年分以後は防衛特別所得税とあわせた扱いに変わる予定のため、売る年の国税庁の情報を確認してください)。

相続した不動産の所有期間は、亡くなった方が取得した日から数えます(国税庁 No.3270)。親が長く持っていた実家なら、相続してすぐに売っても長期になることが多いです。相続した不動産には税金の特例が使える場合もありますが、持分だけの売却では条件を満たさないこともあります。具体的な税額や特例は、税務署や税理士に確認してください。

持分の買取業者を選ぶときの注意点

  • 複数社に査定を依頼する:提示額は業者によって差が出ます。1社だけで決めないことが大切です。
  • 宅地建物取引業の免許を確認する:免許番号を、国土交通省の「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」で確認できます。
  • 買い取った後の進め方を確認する:他の共有者にどう連絡し、どう話を進めるのか。強引な進め方をする業者だと、兄弟との関係が悪化することがあります。
  • 契約を急がせる業者は避ける:「今日決めれば高く買う」といった営業には注意してください。

よくある質問

共有者の同意なしで持分を売ると、違法になりませんか?

法律上、自分の持分を売ること自体は認められています。同意が必要なのは、物件全体を売る場合です。共有者の間で特別な取り決めをしている場合などは、専門家に確認してください。

持分を売ったら、残った兄弟はどうなりますか?

兄弟の持分はそのまま残り、買い取った業者と共有する状態になります。業者から持分の買取や物件全体の売却を持ちかけられるほか、実家に住んでいる場合は使用の対価を求められることもあります。

住宅ローンが残っている場合も売れますか?

亡くなった親の住宅ローンが残っている場合、多くの住宅ローンでは団体信用生命保険(団信)への加入が借入の条件になっているため、相続人が金融機関に請求の手続きをすれば、保険金でローンが完済されることが多いです。ただし、フラット35のように加入が任意のローンや、年齢で保障が終わっている場合もあるため、まず金融機関に契約内容を確認してください。完済されても抵当権の登記は自動では消えないため、抹消登記の手続きが必要です。団信がなく抵当権が付いたままだと、買取を断られたり、完済して抵当権を消すことが前提になったりすることが多いです。まず登記事項証明書の「権利部(乙区)」で抵当権の有無を確認し、金融機関や専門家に相談してください。

この記事を書いた人

出口ガイド編集部 不動産業界20年以上。売買仲介・買取・収益物件・賃貸管理・ファンド運用に携わる。

宅地建物取引士公認 不動産コンサルティングマスター賃貸不動産経営管理士管理業務主任者
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