共有持分の買取業者は大丈夫?よくあるトラブルと、失敗しない業者の選び方

共有持分の買取業者は大丈夫? よくあるトラブルと、失敗しない業者の選び方

この記事の結論

共有持分を買取業者に売ること自体は、自分の財産を売るふつうの取引です。ただし、業者に売る契約は、クーリング・オフができません(宅地建物取引業法第37条の2)。トラブルは「契約する前」に防ぐのが基本です。

トラブルは「勧誘」「契約」「お金と引渡し」「売った後(残る兄弟との関係)」の4つの場面で起きます。契約書の案をもらって持ち帰り、手付・違約金・減額の条件・費用の負担・代金の支払い時期を確かめてから契約する。その場では契約しないことが、一番の予防策です。

業者は1社で決めず、共有持分を扱う複数の業者に、同じ質問で査定を依頼し、免許と処分歴、価格の根拠、残る共有者への対応方針で比べるのがおすすめです。

「持分は、業者が買い取ってくれるらしい」。兄弟と共有している実家のことで調べていくと、多くの人がこの答えにたどり着きます。けれど、いざ業者に連絡しようとすると、「業者に売って、後で兄弟と揉めないか」「変な業者に当たったらどうしよう」「どこに頼めばいいのか分からない」と手が止まってしまうものです。

この記事では、不動産会社で売買仲介や買取に携わってきた立場から、共有持分の買取業者とのトラブルがどの場面で起きるのか、契約の前に何を確かめればよいのか、業者をどう選べばよいのかを、公的機関の資料と法律の規定をもとに解説します。そもそも持分だけを売れる仕組みや、ほかの手放し方との比較は「共有持分だけを売る方法」で詳しく説明しています。

共有持分を買取業者に売るまでの道順と、トラブルが起きやすい場面の図。勧誘・査定の段階ではその場で決めない。契約の段階ではクーリング・オフはできないため契約書を確認する。お金と引渡しの段階では費用の負担と代金の支払い時期を確認する。売った後は残る共有者への連絡の方針を事前に確認しておく。業者に売る前に、全員で売る・共有者に買ってもらう道が残っていないかも確認する。

業者に売る前に:押さえておきたい3つの前提

住宅街に建つ瓦屋根の2階建ての古い一軒家。兄弟で共有している実家のイメージ
※画像はイメージです

この記事は、共有持分を「業者に売る」と決めかけている方に向けて書いています。前提となる仕組みは「共有持分だけを売る方法」で詳しく説明しているので、ここでは業者に売る前に押さえておきたい3点だけを確認します。

持分だけなら同意なしで売れるが、物件全体の売却は全員の同意が必要

共有持分は、共有者それぞれが持っている財産です。自分の持分だけなら、兄弟など他の共有者の同意がなくても売れます。一方、家や土地そのもの(物件全体)を売るには、共有者全員の同意が必要です(民法第251条も参照)。買取業者が買うのは、あくまで「あなたの持分」です。

業者の買取価格は「物件全体の価格×持分割合」より下がるのが一般的

持分を買った業者は、すぐに物件を自由に使ったり売ったりはできません。残る共有者との話し合いや、場合によっては裁判所の手続きにかかる時間・手間・リスクを見込んで価格を付けるため、物件全体の価格を持分割合で分けた額より低くなるのが一般的です。理由は「持分だけを売ると安くなる理由(共有持分だけを売る方法)」で説明しています。

実務の感覚でいえば、ここで大切なのは「安いか高いか」より、その価格が、買った後にどう進めることを前提にした額なのかです。業者に根拠を聞くことが、後で説明する業者選びの基準につながります。

全員で売る・共有者に買ってもらう道が残っていないか

一般に、共有者全員で物件全体を売る方法や、他の共有者に持分を買い取ってもらう方法のほうが、業者に持分だけを売るより手元に残るお金が多くなる場合があります。業者に売るのは、話し合いが難しいときの選択肢の一つです。兄弟の間で「売る」方向の話ができそうなら、仲介業者(不動産会社)に依頼して物件全体を売った場合の価格を一度確かめておくと、話し合いの材料になります。

共有持分の買取業者とのトラブルは、4つの場面で起きる

共有持分の買取業者に限った公的な統計は見当たらないため、ここでは、自宅などの不動産を業者に売る場面で公的機関が注意を呼びかけている内容と、法律の規定をもとに整理します。トラブルが起きやすいのは、「勧誘」「契約」「お金と引渡し」「売った後」の4つの場面です。

共有持分の買取業者とのトラブルの4つの場面と根拠の図。勧誘:断ったのに続く電話や訪問、契約を急がせる。宅地建物取引業法施行規則で禁止されている行為がある。契約:業者に売る契約はクーリング・オフできない(国民生活センターの注意喚起)。お金と引渡し:解約料、売った後の費用負担、減額。契約書の定めしだい。売った後:残る共有者への請求や共有物分割の請求。民法の定め。共有持分に限った公的な統計は見当たらないため、不動産を業者に売るときに公的機関が注意を呼びかけている内容をもとに整理。

場面1 勧誘:しつこい電話・訪問、その場での契約を迫られる

共有の不動産は登記を見れば共有者の名前と住所が分かるため、業者から「持分を買い取ります」というはがきや電話、訪問を受けることがあります。国民生活センターが公表した相談事例にも、「登記情報を参考にしたという売却の勧誘はがきが来て迷惑だ」というものがあります(国民生活センター 2021年6月24日公表 報告書)。

宅地建物取引業者(宅建業者)には、勧誘についてのルールがあります。契約の勧誘をするときに、次のような行為をすることは禁止されています(宅地建物取引業法施行規則第16条の11第1号)。

  • 勧誘の前に、業者の名前、勧誘する人の氏名、契約の勧誘が目的であることを告げずに勧誘する
  • 契約しないと伝えた(勧誘を受けたくないと伝えた)のに、勧誘を続ける
  • 迷惑を覚えさせるような時間に電話や訪問をする
  • 深夜や長時間の勧誘など、私生活の平穏を害する方法で困らせる
  • 正当な理由なく、契約するかどうかを判断するのに必要な時間を与えない

相手を威迫して契約させることも、法律で禁止されています(宅地建物取引業法第47条の2第2項)。国土交通省の関東地方整備局も、「断ったにもかかわらずしつこく電話をかけてくる」「長時間にわたって電話を切らせてくれなかった」「深夜や早朝に電話をかけられた」「自宅に押しかけられ契約等を迫られた」などの勧誘に注意を呼びかけています(関東地方整備局「宅地建物取引業者からの悪質な勧誘電話等にご注意ください。」)。

勧誘を受けたら、その場で決めないこと。迷惑なら「契約しません。今後の勧誘もやめてください」とはっきり伝え、業者名・担当者名・日時を記録しておきましょう。相談先は、後の「トラブルになったとき・しつこい勧誘を受けたときの相談先」で紹介します。

場面2 契約:業者に売る契約は、クーリング・オフできない

居間の低いテーブルに置かれた電話と封筒。業者からの勧誘や契約の連絡を受ける場面のイメージ
※画像はイメージです

ここが、業者に売るときに一番知っておいてほしい点です。国民生活センターは「自宅を不動産業者に売却した場合、クーリング・オフはできません」と注意を呼びかけています(国民生活センター 2021年6月24日公表)。

宅地建物取引業法のクーリング・オフは、「宅地建物取引業者が自ら売主となる」売買契約で、買主が事務所など以外の場所で申し込んだり契約したりした場合の制度です(宅地建物取引業法第37条の2)。持分を業者に売る契約では、業者は「買主」で、あなたが「売主」です。この制度の対象には当たりません。

業界の内側から見て、もう一つ知っておいてほしいことがあります。宅地建物取引業法には、業者が売主のときに一般の買主を守るルールが多くあります。たとえば、違約金などの合計を代金の10分の2までに抑えるルール(宅地建物取引業法第38条)や、業者が受け取れる手付を代金の10分の2までに抑えるルール(宅地建物取引業法第39条)です。ただ、これらはいずれも業者が「自ら売主となる」契約についての定めです。業者が買主になる取引では、宅地建物取引業法には、売主のあなたを守る同じようなルールはありません。契約をやめるときの手付や違約金の扱いは、基本的に契約書の定めしだいになります(ただし、後で説明する消費者契約法で無効になる部分はあります)。

国民生活センターの報告書でも、売主が解除するには、一般に手付の倍額を買主に支払う(いわゆる手付倍返し)必要があり、手付で解除できる期間を過ぎると、ほとんどの場合、契約で定めた違約金が必要になると説明されています(国民生活センター 2021年6月24日公表 報告書)。 同じ報告書には、「長時間の勧誘を受け、説明もなく書面も渡されないまま強引に売却契約をさせられた」「強引に安価な売却契約をさせられ、解約には高額な解約料がかかると言われた」といった相談事例が載っています。

一方で、個人(事業として契約する場合を除く)と事業者の間の契約には消費者契約法が適用されます(消費者契約法第2条)。帰ってほしいと伝えたのに業者が居座った、帰りたいと伝えたのに帰らせてもらえなかった、といった状況で困惑して契約した場合は、取り消せることがあります(消費者契約法第4条第3項)。ただし、取り消せることに気づいたときなど、追認ができる時から1年、または契約の時から5年が過ぎると、取り消せなくなります(消費者契約法第7条第1項)。また、解除に伴う違約金などの条項のうち、同じような契約の解除で事業者に生じる平均的な損害を超える部分は無効とされています(消費者契約法第9条第1項)。

ただし、取消しや無効を主張するには、事情の説明や相手とのやり取りが必要になり、自分の場合に当てはまるかの判断も簡単ではありません。気になる場合は消費生活センターや弁護士に相談してください。いずれにしても、契約した後に取り消すより、契約する前に確かめるほうがずっと確実です。

場面3 お金と引渡し:費用の負担・代金の支払い時期・減額の条件

契約の後、お金や引渡しをめぐって行き違いが起きることもあります。国民生活センターの報告書には、「売却後、住宅のシロアリ駆除費用の負担を求められた」という相談事例があり、契約の際は、売った後に不具合が見つかった場合の扱いを確認するよう呼びかけています(国民生活センター 2021年6月24日公表 報告書)。

売ったものが種類や品質の点で契約の内容に合わない場合、売主は修理や代金の減額などを求められることがあります(契約不適合責任。民法第562条〜民法第564条)。この責任を負わない特約(免責)を付けるかどうかは、契約書で確認します。ただし、免責の特約があっても、売主が知りながら告げなかった事実については責任を免れません(民法第572条)。知っている不具合は、先に伝えておきましょう。

このほか、契約書で確かめておきたいのは次の点です。

  • 費用の負担:測量、家の中に残った荷物(残置物)の撤去、相続登記、抵当権の抹消などの費用を、どちらが負担するか。
  • 代金の支払い時期:代金の受け取りと持分の移転登記を同時に行うのが一般的な段取りです。代金の一部が後払いになる、登記だけが先になる、といった条件なら、その理由を確認しましょう。
  • 減額の条件:査定のときの金額と契約書の金額が同じか。契約の後に「調査の結果」などの理由で金額が変わることがあるのか、あるならどんな場合かが書かれているか。

場面4 売った後:残る兄弟と業者の間で起きること

持分を売った後は、業者から残る共有者(兄弟など)に、持分の買取や物件全体の売却について連絡が入ります。実家に住んでいる共有者がいれば、自分の持分を超えて使っている分の対価を求められることがあり(民法第249条)、話がまとまらなければ、裁判所に共有物の分割を求められることもあります(民法第256条・民法第258条)。共有物分割では、最終的に競売になる場合もあり、兄弟の側の負担が大きくなることがあります。仕組みは「兄弟に黙って売ったらどうなる?(共有持分だけを売る方法)」で説明しています。

売主として知っておきたいのは、売った後は、あなたは共有者ではなくなるため、業者と兄弟のやり取りを止めたり、条件を決めたりする立場にはないということです。だからこそ、売る前に「買った後、残る共有者にどう連絡し、どう話を進めるつもりか」を業者に聞いて比べておくことが大切です。兄弟との関係を大切にしたいなら、売る前に「話し合いがまとまらなければ、自分の持分は売るつもりだ」と伝えておくことも、後の行き違いを減らす一つの方法です。

ここまで読むと、業者に売るのが怖くなったかもしれません。けれど、4つの場面のトラブルの多くは、契約の前に確かめることを確かめ、その場で契約しないことで、防ぎやすくなります。次の章で、確かめることを整理します。

トラブルを避けるために、契約前に確かめること

業者に売る契約にはクーリング・オフがありません。そのため、契約の前に確かめることが、いちばんの予防策です。確かめる場所は「契約書」「契約の後に受け取る書面」「業者の説明」の3つです。

確かめることどこで確かめるかなぜ必要か(対応する場面)
売買代金と支払い時期契約書代金の後払いや登記の先行を防ぐ(お金と引渡し)
手付の額と、手付で解除できる期間契約書契約をやめるときの負担が分かる(契約)
違約金・解約料の額や計算方法契約書業者が買主の場合、宅建業法の違約金の上限(業者が売主のときのルール)が当てはまらない(契約)
減額の条件契約書・業者の説明契約後に金額が変わるのを防ぐ(お金と引渡し)
契約不適合責任の免責の有無契約書売った後の修理費などの請求を防ぐ(お金と引渡し)
費用の負担(測量・残置物・登記・抵当権の抹消)契約書・業者の説明思わぬ出費を防ぐ(お金と引渡し)
価格の根拠と、残る共有者への対応方針業者の説明(記録に残す)兄弟との関係への影響を見極める(売った後)

表は横にスクロールできます。

契約書で確かめること

契約書は、署名する日に初めて見るのではなく、案の段階でもらって持ち帰り、家族と一緒に読むのが基本です。特に次の項目に目を通してください。

  • 売買代金の額と、支払いの時期・方法(持分の移転登記と同時か)
  • 手付金の額と、手付で解除できる期間
  • 違約金・解約料の額、または計算方法
  • 契約の後に金額が変わる(減額される)条件があるか
  • 契約不適合責任を負わない特約(免責)の有無
  • 測量・残置物の撤去・登記・抵当権の抹消などの費用の負担
  • 引渡しの条件(共有者が住んでいる場合の扱いなど)
  • そのほかの特約

手付については、民法に基本のルールがあります。買主が売主に手付を渡した場合、相手が契約の履行に着手するまでは、買主は手付を放棄して、売主は手付の倍額を現実に提供して、契約を解除できます(民法第557条第1項)。持分を業者に売る場合、売主のあなたが解除するには、受け取った手付の倍額を用意する必要があるということです。手付が大きいほど、後から契約をやめにくくなります。先ほどのとおり、業者が買主の場合には手付の額の上限のルール(宅地建物取引業法第39条)は当てはまらないため、額と解除できる期間を必ず確認しましょう。

契約の後に受け取る書面と、重要事項の説明

宅建業者が自ら当事者として売買契約を結んだときは、相手方に、代金の額や支払いの時期、引渡しの時期、移転登記の申請の時期、契約の解除や違約金の定めなどを書いた書面を、遅滞なく交付しなければなりません(宅地建物取引業法第37条第1項)。業者が買主でも、売主のあなたは書面を受け取れるということです(承諾した場合は、電子データで受け取ることもあります)。国民生活センターの報告書(2021年6月24日公表)の相談事例には「書面も渡されないまま」契約させられたというものもあります。契約の後に書面を受け取れなければ、それ自体が要注意のサインです。

一方、物件について宅地建物取引士が行う「重要事項の説明」は、物件を取得する人や借りる人に対し、その人が取得し、または借りようとしている物件について行うものと定められています(宅地建物取引業法第35条第1項)。業者が買主になる取引では、売主のあなたが、家を買うときのような重要事項の説明を受けるとは限りません。だからこそ、契約書は自分で読む必要があります。

業者に口頭で確かめて、記録に残すこと

契約書に書かれにくいことは、業者に直接聞いて、メールなど記録に残る形で答えてもらいましょう。

  • 価格の根拠(物件全体をいくらと見て、どんな進め方を前提にした額か)
  • 買った後、残る共有者にいつ・どのように連絡し、どんな提案をするか
  • 話がまとまらない場合、共有物分割の請求まで進める方針か
  • 契約から代金の支払いまでの段取り
  • 担当者の名前と、宅地建物取引業の免許番号

国民生活センターは、よく分からないことや納得できないことがあれば解決するまで契約しないこと、家族や友人など信頼できる人に相談することを勧めています(国民生活センター 2021年6月24日公表・報告書)。説明はできれば家族と一緒に聞き、その場では契約しないと決めておくと安心です。

失敗しない共有持分の買取業者の選び方:5つの基準

机の上に並べた書類と電卓。複数の業者の査定を比べるイメージ
※画像はイメージです

「共有持分の買取業者のおすすめはどこか」。よく聞かれる質問ですが、この記事では業者のランキングはしません。業者ごとに得意な物件の種類や地域、共有者との交渉の進め方が違い、同じ持分でも提示額や対応が変わるからです。実務の感覚でいえば、「どこがおすすめか」より「どう比べるか」を押さえたほうが、結果的に納得できる業者にたどり着きやすくなります。ここでは、比べるときの5つの基準を紹介します。

基準1 宅建業の免許があり、処分歴を確認できる

宅地建物取引業とは、宅地や建物の売買などを業として行うことをいい(宅地建物取引業法第2条第2号)、これを営むには免許が必要です(宅地建物取引業法第3条)。持分を買い取って、その後に売ることを仕事にしている業者には、宅建業の免許が必要です。

処分歴がないことは、それだけで安心できる理由にはなりませんが、候補を絞る最初のふるいとして、数分あれば確認できます。

基準2 価格の根拠を説明できる

「物件全体をいくらと見たか」「持分割合」「買った後どう進めるか、それにどれくらいの費用・時間・リスクを見込んだか」。この3つから、どう金額を出したかを説明できるかを見ます。根拠を言えないまま高い額を示す業者にも、低い額を示す業者にも注意が必要です。最初の提示額が高くても、契約の後に減額の条件が付いていれば意味がありません。前の章の「減額の条件」とあわせて確認しましょう。

基準3 残る共有者への対応方針を説明できる

買った後、残る共有者に誰が・いつ・どう連絡し、どんな提案(持分の買取、物件全体の売却、使用の対価の請求など)をするのか。話がまとまらないときに、共有物分割の請求まで進めるのか。兄弟との関係を大切にしたい人ほど、ここを比べてください。強引な進め方をする業者だと、兄弟との関係が悪化することがあります。

基準4 契約条件と費用の負担がはっきりしている

手付、違約金、減額の条件、契約不適合責任の免責、費用の負担、代金の支払い時期。前の章で挙げた項目を査定の段階で質問して、はっきりした答えが返ってくるか、契約書の案を事前に見せてくれるかを確認します。答えがあいまいな業者は、契約の後もあいまいなままになりがちです。

基準5 契約を急がせない

「今日決めてくれれば高く買います」「ほかの共有者が先に売るかもしれません」などと、決断を急がせる業者は避けましょう。宅建業者が、正当な理由なく、契約するかどうかを判断するのに必要な時間を与えないことは禁止されています(宅地建物取引業法施行規則第16条の11第1号)。契約書を持ち帰り、家族や専門家に相談する時間をくれるかどうかは、業者の姿勢を見るよい目安になります。

共有持分の買取業者を選ぶ5つの基準のチェックリストの図。1、宅建業の免許があり処分歴を確認できる。2、価格の根拠を説明できる。3、残る共有者への対応方針を説明できる。4、契約条件と費用の負担がはっきりしている。5、契約を急がせない。

「おすすめの業者」の探し方:共有持分を扱う複数社に当てる

実務の感覚でいえば、共有持分を扱う業者は一般の不動産会社より限られることが多く、得意な地域や物件も業者によって違います。共有持分の買取を扱う複数の業者に査定を依頼し、5つの基準で比べるのが、「おすすめの業者」にたどり着く一番の近道です。依頼するときは、次の章の質問リストを使うと比べやすくなります。

複数社に査定を依頼する進め方と、業者への質問リスト

比べ方の手順と、そのまま業者に送れる質問リストをまとめます。

査定依頼から契約までの4ステップ

  1. 持分割合と抵当権の有無を確認する:登記事項証明書で、自分の持分の割合と、抵当権が付いていないかを確認します(流れと必要書類は「持分を売るときの流れと必要書類(共有持分だけを売る方法)」を参照)。
  2. 複数の業者に、同じ情報・同じ質問で査定を依頼する:条件をそろえないと、提示額や答えを比べられません。
  3. 回答を表にして比べる:価格だけでなく、価格の根拠、残る共有者への対応方針、契約条件を並べます。
  4. 契約書の案を持ち帰って確認してから契約する:代金の受け取りと持分の移転登記は同時に行うのが一般的な段取りです。

業者に送る質問リスト(コピーして使えます)

査定を依頼するときに、各社に同じ質問を送ってください。答えの中身だけでなく、答え方の具体さや、書面で出してくれるかどうかも比べる材料になります。

  1. 査定額は、物件全体の価格をいくらと見て、どんな進め方を前提に出した額ですか。
  2. 買い取った後、他の共有者にはいつ・どのように連絡しますか。
  3. 他の共有者と話がまとまらない場合、共有物分割の請求まで進めますか。
  4. 実家に住んでいる共有者がいる場合、その人にどんな請求や提案をしますか。
  5. 手付金の額と、契約後に解約する場合の扱い(手付で解除できる期間・違約金)を教えてください。
  6. 契約後に買取額が変わる(減額される)ことはありますか。あるなら、どんな場合ですか。
  7. 測量・残置物の撤去・登記・抵当権の抹消の費用は、どちらの負担ですか。
  8. 契約不適合責任は免除されますか。
  9. 代金の支払いと持分の移転登記は同時ですか。
  10. 宅地建物取引業の免許番号を教えてください。契約書の案は、事前にもらえますか。

答えない、はぐらかす、「会ってから説明します」とだけ返す業者は、候補から外したほうがいいかもしれませんね。

比べた結果、「業者に売らない」判断もあり

比べてみた結果、提示額が思っていたより低い、どの業者の方針にも納得できない、ということもあります。そのときは、業者に売らずに、共有者との話し合いを続ける、全員で売る方向をもう一度探る、弁護士に入ってもらって共有物分割を検討する、といった道に戻って構いません。ほかの方法との比べ方は「共有持分を手放す3つの方法(共有持分だけを売る方法)」を参考にしてください。業者に売ることは、あくまで選択肢の一つです。

トラブルになったとき・しつこい勧誘を受けたときの相談先

困りごとの種類によって、相談先が違います。

困ったときの相談先の振り分けの図。しつこい勧誘や業者の対応の問題は、免許を出した行政庁(国土交通大臣免許なら本店所在地を管轄する地方整備局等、都道府県知事免許なら都道府県の宅地建物取引業の担当部署)。契約・解約・お金の問題は、消費者ホットライン188から消費生活センター等へ。共有者との争いや契約の取消しは弁護士へ。

勧誘や業者の対応の問題:免許を出した行政庁

宅建業者の悪質な勧誘は、その業者に免許を出した行政庁に相談できます。国土交通大臣の免許なら本店がある地域を管轄する地方整備局等の宅地建物取引業の免許部局、都道府県知事の免許ならその都道府県の宅地建物取引業の免許部局です(関東地方整備局「宅地建物取引業者からの悪質な勧誘電話等にご注意ください。」)。免許番号は、免許を出した行政庁(国土交通大臣か都道府県知事か)とセットで付いています。大臣免許の業者の窓口は、本店のある地域を管轄する地方整備局等です(国土交通省「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」操作マニュアル)。業者に免許番号を聞くときは、どの行政庁の免許かもあわせて確認しましょう。

契約・解約・お金の問題:消費者ホットライン「188」

消費者ホットライン「188」に電話すると、地方公共団体が設置している身近な消費生活センターや消費生活相談窓口を案内してもらえます(消費者庁「消費者ホットライン」)。国民生活センターも、不安に思ったときやトラブルになったときは、消費生活センター等に相談するよう呼びかけています(国民生活センター 2021年6月24日公表)。契約する前の相談でも構いません。

共有者との争い・契約の取消し:弁護士

共有物分割の手続き、契約の取消しや無効の主張、業者と残る共有者との争いなどは、弁護士に相談してください。費用が心配な場合は、法テラス(日本司法支援センター)の「無料法律相談・弁護士等費用の立替」の案内も確認してみましょう。民事法律扶助の無料法律相談は、収入や資産(預貯金など)が一定基準以下の方が対象です(法務省「あかれんが Vol.82」)。詳しい条件は法テラスで確認してください。

窓から光の入る明るい部屋のテーブルと椅子のイメージ
※画像はイメージです

よくある質問

業者と契約した後に、やっぱりやめることはできますか?

業者に売る契約は、クーリング・オフができません。宅地建物取引業法のクーリング・オフは業者が売主の契約だけが対象で(宅地建物取引業法第37条の2)、国民生活センターも「自宅を不動産業者に売却した場合、クーリング・オフはできません」と注意を呼びかけています(国民生活センター 2021年6月24日公表)。やめられるかどうか、やめるときにいくらかかるかは、契約書の手付や違約金の定めしだいです。売主が手付で解除するには、相手が契約の履行に着手する前に、手付の倍額を現実に提供する必要があります(民法第557条第1項)。困ったときは、早めに消費者ホットライン「188」(消費者庁)に相談してください。

業者から突然「持分を買い取りたい」と電話やはがきが来ました。応じても大丈夫ですか?

その場で決めないでください。まず業者の免許番号と処分歴を確認し(企業情報検索システム・ネガティブ情報等検索サイト)、売るつもりがあるなら、ほかの業者にも査定を依頼して比べましょう。断ったのに勧誘を続ける、迷惑な時間に電話や訪問をする、といった行為は禁止されています(宅地建物取引業法施行規則第16条の11第1号)。しつこい場合は、免許を出した行政庁に相談できます(関東地方整備局の注意喚起)。

兄弟に知らせずに業者に売っても大丈夫ですか?

自分の持分を売るのに、他の共有者の同意はいりません。ただ、売った後は業者から兄弟に連絡が入るため、売ったことはいずれ伝わります。兄弟の側に起きることは「兄弟に黙って売ったらどうなる?(共有持分だけを売る方法)」で説明しています。関係を大切にしたい場合は、事前に伝えておくこと、業者の連絡の方針を確認しておくことをおすすめします。

兄弟が持分を業者に売ってしまい、業者から連絡が来ました。どうすればいいですか?

すぐに応じたり、書類に署名したりせず、業者の提案(持分の買取、物件全体の売却、使用の対価の請求など)の内容を書面でもらいましょう。そのうえで、弁護士に相談して対応を考えるのが安心です。取れる道は、提案の内容や、実家に住んでいるかどうかなどで変わります。業者が持分を買った後に起きることは「共有持分だけを売る方法」も参考にしてください。

高齢の親も共有者です。親が業者と契約してしまわないか心配です。

国民生活センターは、高齢者の自宅の売却トラブルについて注意を呼びかけており、判断能力が低下した方が契約し、後で家族が気づいてトラブルになるケースがあることを問題点として挙げています(国民生活センター 2021年6月24日公表)。業者から連絡が来たら家族に知らせてもらう、契約の話になったら家族が同席する、と親と決めておきましょう。親の判断能力に不安がある場合の手続きは、弁護士や司法書士などの専門家に相談してください。

この記事を書いた人

出口ガイド編集部 不動産業界20年以上。売買仲介・買取・収益物件・賃貸管理・ファンド運用に携わる。

宅地建物取引士公認 不動産コンサルティングマスター賃貸不動産経営管理士管理業務主任者
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