相続した実家(空き家)が売れない理由と、今すぐできる5つの対処法

相続した実家が売れないとき|理由の確かめ方と、今すぐできる5つの対処法

この記事の結論

相続した実家が売れないのには、たいてい理由があります。理由が分かれば、打つ手が決まります。まずは、価格、建物の状態、権利関係(共有名義・借地・名義が親のまま)、法律の制限(再建築不可など)、地域の需要のどれに当てはまるかを、手元の書類と役所の窓口で確かめましょう。

今すぐできる対処法は5つです。①相続の手続きと権利関係を整える ②仲介業者(不動産会社)に依頼するか、買取業者に売るかを選ぶ ③片付け・解体・リフォームをするかは、依頼先に確かめて決める ④価格と売り出し方を見直す ⑤それでも売れなければ、手放す方法も比べる。③④で売れなければ、②に戻って依頼先を選び直します。

空き家のまま置いておくと、固定資産税や管理の負担が続き、市町村から勧告を受けると固定資産税の住宅用地の特例が外れることもあります。相続登記(2024年4月1日より前の相続は2027年3月31日まで)や、空き家の3,000万円特別控除(相続から3年目の年末と2027年12月31日の、早いほうまでの売却)にも期限があります。急いで安売りする必要はありませんが、まずは複数の業者に査定を依頼して、価格の根拠を比べるところから始めてみてください。

「売りに出しているのに、問い合わせがほとんどない」「不動産会社に『この家は難しいですね』と言われた」。親から相続した実家が売れないまま、固定資産税と草刈りの心配だけが続く。遠方なら、様子を見に行くのも簡単ではありません。

ひと口に「売れない」といっても、理由は家ごとに違います。価格が合っていないだけのこともあれば、名義や権利関係が整っていないこと、法律上の制限があることもあります。理由によって、やるべきことはまったく変わります。

この記事では、不動産会社で売買仲介や買取に携わってきた立場から、売れない理由の確かめ方、空き家を持ち続けるリスク、今すぐできる5つの対処法を、順番に解説します。

相続した実家が売れない理由から、出口までの地図。左に売れない理由の4つのグループ(価格・売り出し方/建物の状態・家財/権利・手続き(共有名義・借地・相続登記)/法律・立地(再建築不可・買い手が少ない))。中央に、まず確かめること(書類・役所・査定の根拠)。右に3つの出口(仲介業者に依頼して売る/買取業者に売る/手放す(0円譲渡・空き家バンク・相続土地国庫帰属制度など))。

相続した実家が売れない7つの理由と、確かめ方

住宅街の角に建つ、雨戸が閉まった古い瓦屋根の2階建ての家。玄関まわりに落ち葉がたまり、庭木や草が伸びた空き家のイメージ
※画像はイメージです

売れない理由は、大きく「価格・売り出し方」「建物」「権利・手続き」「法律・立地」に分けられます。実務の感覚でいえば、理由はひとつとは限らず、いくつかが重なっていることもよくあります。ここでは理由ごとに、よくある状態、自分で確かめる方法、対処法の順に見ていきます。

理由1 価格が、家の状態や地域の需要に合っていない

売り出し価格が、建物の古さや、周辺で実際に取引された価格、その地域で家を探している人の予算とずれていると、問い合わせは来にくくなります。査定額は「この価格なら売れそうだ」という業者の見立てで、その価格で売れることを保証するものではありません。複数社の査定のうち、いちばん高い額を出した会社に任せた結果、売り出し価格が周辺の取引価格より高くなっていることもあります。

確かめ方:査定書を見直し、どんな取引事例と比べたのか、建物をどう評価したのかを確認します。周辺の取引価格は、国土交通省の「不動産情報ライブラリ」で調べられます。すでに売り出しているなら、依頼している仲介業者に、ネットでの閲覧数や問い合わせの数を聞いてみましょう。

対処法:後で説明する「対処法④ 価格と売り出し方を見直す」へ。

理由2 建物が古い・傷んでいる、家財が残ったまま

雨漏り、建物の傾き、シロアリの被害などがあると、買い手は買った後の修理費を心配します。家財が残ったままだと、内覧のときに暮らしのイメージがわきにくく、印象も悪くなりがちです。建物がかなり古い場合は、買い手や業者から建物にはほとんど価値がないと見られ、土地として評価されることもあります。

確かめ方:建てた年は、建物の登記事項証明書(表題部の「原因及びその日付」欄)や、固定資産税の課税明細書で確認できます。不具合は、外から見て分かる範囲(屋根、外壁、雨どい、室内のしみなど)を書き出しておきましょう。仲介業者に依頼して売る場合、媒介契約の書面には、建物状況調査(インスペクション)を行う者のあっせんに関する事項が記載されます(宅地建物取引業法第34条の2第1項第4号)。

対処法:「対処法② 仲介業者に依頼するか、買取業者に売るかを選ぶ」「対処法③ 片付け・解体・リフォームをするかは、依頼先に確かめて決める」へ。

理由3 再建築不可など、法律上の制限がある

都市計画区域などの中では、原則として、建物の敷地は建築基準法上の「道路」に2m以上接していなければなりません(建築基準法第43条第1項)。都市計画区域などの外では、この接道の決まりはかかりません(建築基準法第41条の2)。この条件を満たさない土地では、今の家を取り壊すと新しく建てられないのが原則です(いわゆる再建築不可。例外は「再建築不可の家は買取で売れる?」で説明しています)。建て替えられない家は買い手が限られるため、売れにくくなります。

確かめ方:市役所・区役所の建築指導課などの窓口で、家の前の道が建築基準法上の道路に当たるか、敷地がどれだけ接しているかを確認します。

対処法:確かめ方と売り方は「再建築不可の家は買取で売れる?」で詳しく説明しています。「対処法②」の買取業者も候補になります。

理由4 共有名義で、相続人どうしの意見がまとまらない

兄弟で相続して実家が共有名義になっている場合、家全体を売るには、共有者全員がそれぞれの持分を売ることになるため、全員の同意が必要です(共有物の変更に全員の同意を求める民法第251条も参照)。1人でも反対すると、家全体は売れません。行方が分からない共有者がいる場合は、裁判所の手続きで売れる道もありますが(民法第262条の3)、遺産分割が終わっていない場合は相続開始から10年を経過するまで使えないなどの制限があります。遺産分割の話し合いが終わっていない場合も、相続人全員がそろわなければ、売る手続きを進められません。

確かめ方:登記事項証明書の権利部(甲区)で、誰の名義になっているか、持分の割合を確認します。遺産分割協議書があるかも確かめましょう。

対処法:「対処法① 相続の手続きと権利関係を整える」へ。話し合いがまとまらない場合でも、自分の持分だけなら売れます。詳しくは「共有持分だけを売る方法」で説明しています。

理由5 借地の上に建っている

土地が親のものではなく、地主から借りている借地の場合、建物と借地権(土地の賃借権)を第三者に売るには、原則として地主の承諾が必要です(民法第612条)。承諾が得られないと、一般の買い手には売りにくくなります。

確かめ方:土地の登記事項証明書で所有者が親以外の人になっていないか、地代を払っていた記録(通帳の振込など)や土地の賃貸借契約書がないかを確認します。

対処法:「借地権付きの家を売る方法」で、承諾の考え方と、承諾が得られないときの出口を説明しています。

理由6 名義が亡くなった親のまま、境界がはっきりしない

登記の名義が亡くなった親のままの実家を売るには、先に相続人の名義にする相続登記が必要です(法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」)。相続登記は2024年4月1日から義務になっており、期限もあります。期限については、後の「期限のある制度」で説明します。

また、隣地との境界がはっきりしない土地は、買い手が不安を感じたり、売る前に測量や隣地の方との立ち会いが必要になったりして、時間がかかることがあります。

確かめ方:登記事項証明書(法務局の窓口やオンラインで取得できます)の所有者の欄を確認します。境界は、敷地の角に境界標(杭やプレート)があるか、法務局に地積測量図があるかを見ておきましょう。

対処法:「対処法① 相続の手続きと権利関係を整える」へ。

理由7 地方・郊外で、買い手そのものが少ない

人口が減っている地域や、駅や買い物の便から遠い地域では、家を探している人自体が少なく、価格を下げても問い合わせが来ないことがあります。全国の空き家は900万2千戸と過去最多になっています(総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計 結果の概要」)。こうした地域では、売り方の工夫だけでなく、手放す方法も含めて考える必要が出てきます。

確かめ方:不動産のポータルサイトで、似た物件が長く掲載されたままになっていないかを見ます。地元の仲介業者に、家を探している人がいるかを聞くのも参考になります。

対処法:「対処法④」の隣地の方への声かけ、「対処法⑤ それでも売れなければ、手放す方法も比べる」へ。

7つの理由と確かめ方を、表にまとめます。当てはまる理由に印を付けながら見てください。

売れない理由自分で確かめる方法主な対処法・詳しい記事
1 価格が合っていない査定書の根拠、不動産情報ライブラリの取引価格、閲覧数・問い合わせ数対処法④
2 建物が古い・傷んでいる、家財が残っている登記事項証明書・課税明細書で建てた年、目で見て分かる不具合対処法②・③
3 再建築不可など法律上の制限役所の建築指導課などで、前の道と接している長さを確認対処法②、再建築不可の家の記事
4 共有名義で意見がまとまらない登記事項証明書の権利部(甲区)、遺産分割協議書対処法①、共有持分の記事
5 借地の上に建っている土地の登記事項証明書の所有者、地代の記録、賃貸借契約書借地権の記事
6 名義が親のまま、境界が不明登記事項証明書の所有者、境界標、地積測量図対処法①
7 買い手そのものが少ないポータルサイトの売り出し状況、空き家バンク、地元の業者対処法④・⑤

表は横にスクロールできます

売れないまま空き家を持ち続けると、税金・管理の負担と責任が続く

雨戸が閉まり、庭に雑草が伸びた空き家のイメージ
※画像はイメージです

売れないからといって、急いで安売りする必要はありません。ただ、何もせずに置いておく間にも、お金や手間がかかり、持ち主としての責任も続きます。

固定資産税と管理の費用は、住んでいなくてもかかる

固定資産税は、毎年1月1日(賦課期日)の状況をもとに課税されます(地方税法第359条)。住んでいない空き家でも、持っている限り毎年かかります。

住宅が建っている土地は「住宅用地の特例」によって、土地の固定資産税の課税標準が、200㎡以下の部分(住宅1戸の場合)で6分の1、それを超える部分で3分の1に軽くなっています(地方税法第349条の3の2)。

このほか、火災保険料、電気や水道の基本料金、草刈りや見回りの費用、遠方なら行き来の交通費もかかります。

管理不全空家・特定空家として勧告を受けると、住宅用地の特例が外れる

2023年12月13日に施行された改正「空家等対策の推進に関する特別措置法」(空家法)で、「管理不全空家等」という区分ができました(国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律について」)。管理が十分でなく、そのままにすると特定空家等になるおそれがある空き家について、市町村長は所有者等に指導をすることができ、それでも改善されず、そのおそれが大きいときは、修繕などの措置を勧告することができます(空家法第13条)。

さらに、倒壊など保安上危険となるおそれがある、衛生上有害となるおそれがある、景観を著しく損なっているなどの状態の空き家は「特定空家等」とされます(空家法第2条第2項)。特定空家等になると、助言・指導、勧告、命令、行政代執行という順で措置を受けることがあり(空家法第22条)、命令に違反すると50万円以下の過料の対象になります(空家法第30条第1項)。

税金の面で知っておきたいのは、管理不全空家等や特定空家等として勧告を受けると、その敷地は固定資産税の住宅用地の特例の対象から外れることです(地方税法第349条の3の2第1項)。特例が外れたときに税額がどれだけ変わるかは、土地の評価などによって違います。

確かめ方:市町村から指導や勧告の書面が届いていないかを確認しましょう。屋根や外壁の傷み、雑草や木の枝が隣地や道路にはみ出していないか、ごみがたまっていないかなど、外から見える状態も定期的に見ておきたいところです。

空き家を放置したときの流れの図。上段の管理不全空家等は、市町村の指導、勧告と進み、勧告を受けると固定資産税の住宅用地の特例の対象外になる。放置して状態が悪くなると下段の特定空家等になり、助言・指導、勧告(住宅用地の特例の対象外)、命令(違反すると過料)、行政代執行と進む。勧告などの判断は市町村が行う。

近所に被害が出たときの責任と、相続放棄しても管理が残る場合

空き家の所有者等には、周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう、空き家を適切に管理する努力義務があります(空家法第5条)。また、塀や建物などの設置や保存に問題があって他人に損害を与えたときは、その占有者が賠償の責任を負い、占有者が必要な注意をしていたときは所有者が賠償しなければなりません(民法第717条第1項)。屋根材が飛んだり、ブロック塀が倒れたりして、通行人や隣の家に被害が出ることも考えておきたいところです。

「相続放棄をすれば、空き家とは関係なくなる」と考える方もいますが、必ずしもそうとは限りません。相続を放棄した人でも、放棄の時に相続財産を現に占有しているときは、ほかの相続人や相続財産の清算人に引き渡すまでの間、その財産を保存しなければなりません(民法第940条第1項)。この考え方は、国土交通省と総務省が自治体向けに示した資料でも説明されています(国土交通省・総務省「相続放棄者の空き家の管理責任の考え方について(情報提供)」)。相続放棄については、最後の「よくある質問」でも触れます。

今すぐできる5つの対処法

対処法は次の5つです。手続きの土台を整え(①)、依頼先を選び(②)、その依頼先に確かめながら建物の扱い(③)と価格・売り出し方(④)を決め、それでも売れなければ手放す方法を考える(⑤)、という順番です。③④を進めても売れないときは、②に戻って依頼先を選び直します。

  1. 相続の手続きと権利関係を整える:名義が親のまま、共有名義で話がまとまっていない場合は、ここから。
  2. 仲介業者に依頼するか、買取業者に売るかを選ぶ:依頼先によって、この後の③④の判断が変わります。再建築不可・借地などの事情がある、早く手放したい場合は、買取業者も候補に。
  3. 片付け・解体・リフォームをするかは、依頼先に確かめて決める:建物の古さや家財が気になっている場合に。
  4. 価格と売り出し方を見直す:売り出しているのに反応がない場合に。
  5. それでも売れなければ、手放す方法も比べる:依頼先を選び直しても値段がつかない場合に。
今すぐできる5つの対処法の図。前提として「①相続の手続きと権利関係を整える」。次に「②仲介業者に依頼するか、買取業者に売るかを選ぶ」、「③片付け・解体・リフォームをするかは、依頼先に確かめて決める(買取業者によって、家の状態で価格の付き方が変わる)」、「④価格と売り出し方を見直す」と進む。③④で売れなければ、②に戻って依頼先を選び直す。それでも売れなければ「⑤手放す方法も比べる(0円譲渡・空き家バンク・相続土地国庫帰属制度)」。

対処法① 相続の手続きと権利関係を整える

売るための土台です。誰が実家を相続するかを決める遺産分割の話し合い、相続登記、共有になる場合は売り方についての共有者の合意、という順に整えます。

兄弟が離れて暮らしている場合は、細かい手続きより先に、「売るのか」「いくらなら売るのか」「誰が窓口になって業者とやり取りするのか」を決めておくと、その後が進めやすくなります。

遺産分割がすぐにまとまらない場合は、自分が相続人であることなどを登記官に申し出る「相続人申告登記」によって、相続登記の申請義務を果たしたものとみなされる仕組みがあります(不動産登記法第76条の3)。ただし、実家を売るときには、別に相続登記が必要です(法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」)。相続登記の手続きは、司法書士に依頼することもできます。

境界がはっきりしない場合は、測量が必要かどうかを、仲介業者や土地家屋調査士に相談しましょう。兄弟と話がまとまらないときは「共有持分だけを売る方法」も参考にしてください。

対処法② 仲介業者に依頼するか、買取業者に売るかを選ぶ

名義と権利関係のめどが立ったら、次は依頼先を選びます。誰に売るかによって、片付けや解体をするか、価格や売り出し方をどうするかの判断が変わるためです。

仲介業者(不動産会社)に依頼して売る方法は、業者に一般の買い手を探してもらう方法です。買取業者に売る方法は、業者自身が買主になる方法です。

再建築不可・共有名義・借地といった事情がある場合や、遠方で何度も足を運べない場合は、買取業者も有力な候補です。どちらか一方に決めきれないときは、仲介業者と買取業者の両方に査定を依頼して比べることもできます。価格・期間・売った後の責任などの違いは、後の「仲介業者に依頼するか、買取業者に売るか:実家の状況別の選び方」で比べます。

対処法③ 片付け・解体・リフォームをするかは、依頼先に確かめて決める

人が住まなくなった実家の和室のイメージ
※画像はイメージです

「片付けてから」「更地にしてから」「直してから」売ろうと考える方は多いのですが、どれもお金と時間がかかります。そして、片付けや解体をしたほうがよいかどうかは、売る相手によって変わります。実務の感覚でいえば、先に手を付けるより、②で選んだ依頼先に「このままの場合」と「片付けた(解体した)場合」の価格を確かめてから決めるほうが、損をしにくくなります。

片付け(家財):仲介業者に依頼して売る場合は、内覧の印象をよくするために片付けたほうがよいことが多いでしょう。買取業者に売る場合は、同じ買取でも、業者によって家の状態で価格の付き方が変わります。家財が残ったままでも価格がほとんど変わらない業者もあれば、片付けた状態のほうが価格を上げやすい業者もあります。片付けるかどうかは、業者ごとに確認しましょう。どちらにしても、先に貴重品や大切な書類を探しておきましょう。特に、親が実家を買ったときの売買契約書や領収書は、売った後の税金に直結します。相続した場合は、親が買ったときの代金や取得日をそのまま引き継ぎます(国税庁 No.3270)。買ったときの代金が分からないと、売った金額の5%を取得費とする方法(概算取得費)を使うことになり(国税庁 No.3258)、税金が高くなることがあります。

解体して更地にする:建物があることで買い手が見つからない場合、更地にすると売りやすくなることがあります。一方で、解体費がかかるうえ、1月1日の時点で住宅が建っていない土地は住宅用地の特例(地方税法第349条の3の2)の対象にならないため、原則として、解体した翌年度から土地の固定資産税が上がる可能性があります(賦課期日は地方税法第359条)。また、再建築不可の土地は、更地にしても新しく家を建てられません(建築基準法第43条第1項、「再建築不可の家は買取で売れる?」)。解体費の補助制度の有無や条件は市町村ごとに違うため、市町村の空き家の担当窓口に確認してください。

リフォーム:かけた費用の分だけ売却価格が上がるとは限らず、買い手が自分の好みで直したいこともあります。買取業者は、買った後に自社で工事をする前提で価格を出すのが一般的です。売る前のリフォームは、依頼先の意見を聞いてからにしましょう。

対処法④ 価格と売り出し方を見直す

「売れない」と言われた家でも、価格と売り出し方を見直すことで、反応が変わることがあります。仲介業者に依頼して売っている場合に見直したいのは、次の4つです。

  • 売り出し価格の根拠:依頼している仲介業者に、比べた取引事例と建物の評価を改めて聞きます。値下げをするなら、その根拠を確かめたうえで判断しましょう。周辺の取引価格は国土交通省「不動産情報ライブラリ」でも確認できます。
  • 売り出し方:建物が古い場合、「中古の一戸建て」としてではなく「古家付きの土地」として売り出すと、土地を探している人や建て替えを考えている人の目にも留まりやすくなることがあります。内覧の前に片付けや掃除をする、写真を撮り直すといった工夫も考えられます。
  • 依頼先と契約の種類:専任媒介契約(ほかの業者に重ねて依頼できない契約)の有効期間は、3か月を超えることができません(宅地建物取引業法第34条の2第3項)。契約の更新のタイミングで依頼先を替える、複数の業者に依頼できる一般媒介契約に切り替える、といった見直しも選べます。
  • 隣地の方への声かけ:隣地の所有者が、敷地を広げたい、駐車場にしたいといった理由で買い手になることがあります。仲介業者を通して打診してもらう方法もあります。

買取業者に売る場合は、提示額の根拠(買った後にどう活用する前提か)を聞き、ほかの買取業者の提示額と比べます。それでも合わなければ、②に戻って依頼先を選び直しましょう。

対処法⑤ それでも売れなければ、手放す方法も比べる

依頼先を選び直しても値段がつかない場合は、「売る」以外の手放し方も比べてみましょう。主な方法は次の3つです。

どの方法も、向いている土地や条件が違います。それぞれの手順・費用と、ほかの手放し方との比べ方は、「田舎の空き家が売れない・値段がつかないときの手放し方」で説明しています。なお、相続放棄は実家だけを選んで放棄することはできません(「よくある質問」で説明します)。

仲介業者に依頼するか、買取業者に売るか:実家の状況別の選び方

机の上に並べた複数の書類と電卓。査定を比べるイメージ
※画像はイメージです

どの出口を選ぶかは、実家の事情と、「時間をかけても高く売りたいか」「早く手間なく手放したいか」で変わります。3つの出口を比べると、次のようになります。

出口向いている実家価格の傾向期間・手間建物・家財売った後の責任
仲介業者に依頼して売る
まず確かめたい場合
立地や建物に大きな問題がなく、時間をかけても高く売りたい買い手が見つかれば、買取業者に売るより高くなる可能性がある買い手が見つかるまで時間がかかることがある。内覧の対応なども必要片付けや掃除をしたほうが内覧の印象がよい契約不適合責任を負うのが原則(特約で範囲を決める)
買取業者に売る再建築不可・共有名義・借地などの事情がある、早く手放したい、遠方で手間をかけられない一般の買い手に売れる価格より低くなりやすい。業者によって差が出る条件が合えば比較的短い現状のまま、家財が残ったままでも買い取る業者がある免責の特約を付けられる場合がある
手放す(0円譲渡・相続土地国庫帰属制度)仲介業者・買取業者のどちらでも値段がつかない0円譲渡は代金なし。国庫帰属は負担金を納める相手探しや審査に時間がかかることがある国庫帰属は建物を解体してから申請する方法によって異なる

表は横にスクロールできます。価格・期間は一般的な傾向で、物件や地域によって大きく変わります。空き家バンクは自治体が空き家の情報を紹介する仕組みで、売買にも使われます(対処法⑤)。

表の「売った後の責任」について補足します。仲介業者に依頼して売った後に、契約の内容に合わない不具合が見つかると、売主が修理や代金の減額などを求められることもあります(契約不適合責任。民法第562条〜民法第564条)。買取業者には、契約不適合責任を負わない(免責)特約で買い取る業者もあります。ただし、免責の特約があっても、売主が知りながら告げなかった不具合については責任を免れません(民法第572条)。

実家の状況別に、出口の選び方を示す図。最初の質問「再建築不可、共有名義で話がまとまらない、借地など、訳ありの事情がある?」に、はいなら訳あり物件を扱う買取業者にも複数社で査定を依頼する(仲介業者に依頼して売れる場合もある)。いいえなら次の質問「時間をかけても高く売りたい?」に進み、はいなら複数の仲介業者に査定を依頼して売り出し方を見直す。いいえ(早く・手間なく)なら買取業者にも査定を依頼する。どちらでも値段がつかないときは、0円譲渡・空き家バンク・相続土地国庫帰属制度を比べる。

まずは複数の仲介業者に査定を依頼して、価格の根拠と売り方を比べる

1社の査定、1社の売り方だけで「この家は売れない」と決めてしまうのは、もったいないことです。仲介業者によって、得意な地域や物件の種類、空き家や相続した家の取引への慣れが違います。複数社に査定を依頼したら、金額だけでなく、次の点も比べましょう。

  • 査定額の根拠:どんな取引事例と比べたか、建物をどう評価したか。
  • 売り出し方の提案:古家付きの土地として売るか、更地にするか、解体は必要か。
  • 空き家や相続した家の取引への慣れ:遠方に住む売主への対応(鍵の預かり、書類の郵送でのやり取りなど)も含めて。

一括査定のサービスを使うと、複数社にまとめて依頼できます。複数の会社から連絡が来ることがあるので、連絡方法を指定できるかなども確認しておくと安心です。

訳ありの実家や、早く手放したい場合は、買取業者にも複数社で当てる

再建築不可・共有名義・借地といった事情がある場合や、建物の傷みや家財の量が大きい場合、遠方で管理を続けられない場合は、買取業者への売却も比べましょう。買取業者は、買った後にどう活用して売るかから逆算して価格を出します。業者ごとに得意な物件や想定する活用の方法が違うため、提示額にも差が出ます。1社だけで決めず、複数社に査定を依頼するのが基本です。比べたいのは次の点です。

  • 提示額の根拠:買った後にどう活用する前提の価格か。
  • 費用の負担:家財の撤去、解体、測量の費用をどちらが負担するか。
  • 売った後の責任:契約不適合責任の免責の特約を付けるか、その範囲(民法第572条の例外にも注意)。
  • お金と引き渡しの時期:手付金の額、代金を受け取る時期、引き渡しの時期。
  • 宅地建物取引業の免許:不動産を業として売買するには免許が必要です(宅地建物取引業法第3条)。免許番号は、国土交通省の「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」で確認できます。

共有名義の実家で、自分の持分だけを売る場合は、共有持分を扱う買取業者に査定を依頼することになります。業者の選び方と注意点は「共有持分の買取業者の選び方」で説明しています。

人が亡くなった家(事故物件)を売る場合の、告げる内容と売り方は、「事故物件を売る方法」で説明しています。

期限のある制度:相続登記と3,000万円控除は早めに確認

相続した実家には、期限のある制度が2つあります。期限を過ぎると使えなくなるものもあるので、売るかどうかを決める前に確認しておきましょう。

相続登記は、2024年4月より前の相続なら2027年3月31日まで

相続登記は、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請する義務があります(不動産登記法第76条の2)。2024年4月1日より前に相続した不動産でまだ登記していない場合は、2027年3月31日までが期限です(法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」)。正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料の対象になります(不動産登記法第164条第1項)。遺産分割がまとまらないときの相続人申告登記は「対処法①」で説明しています。

空き家の3,000万円特別控除は、2つの期限のうち早いほうまでに売る

親が住んでいた家を相続して売った場合、一定の要件を満たせば、譲渡所得から最高3,000万円を差し引ける特例があります(国税庁 No.3306、租税特別措置法第35条第3項)。この特例の期限は2つあり、早いほうが期限になります。

  • 期限①:相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること(たとえば、2023年中に相続が始まった場合は2026年12月31日まで。国税庁 No.3306)
  • 期限②:2027年12月31日までに売ること(制度の期限。国税庁 No.3306)

このほか、1981年(昭和56年)5月31日以前に建てられた家であること、家を残して売る場合の耐震基準や、取り壊しについての要件などもあります。

要件は細かく決められているので、売る前に国税庁 No.3306の全文を確認し、税務署や税理士に相談してください。期限の数え方や要件の詳しい内容は、「相続した実家を売るときの税金」で説明しています。

よくある質問

実家だけ相続放棄すれば、空き家の管理や税金から逃れられますか?

相続放棄をした人は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなされます(民法第939条)。そのため、実家だけを選んで放棄することはできず、預貯金なども含めて相続しないことになります。放棄は、原則として自分のために相続が始まったことを知った時から3か月以内に(民法第915条第1項)、家庭裁判所に申述して行います(民法第938条、裁判所「相続の放棄の申述」)。また、放棄の時に実家を現に占有していた人は、引き渡すまでの間、保存の義務を負います(民法第940条第1項)。放棄するかどうかは、弁護士や司法書士に相談して判断してください。

遠方に住んでいて、実家に何度も行けません。それでも売れますか?

売れる可能性はあります。仲介業者や買取業者に鍵を預けて内覧や現地の調査を任せる、契約の書類を郵送でやり取りする、といった対応をしている業者もあります。ただ、対応は業者によって違うので、依頼する前に、鍵の預け方や契約・本人確認の方法を確認しておきましょう。

固定資産税を払い続けるより、早く安く売ったほうがいいですか?

一概には言えません。持ち続ける間の固定資産税や管理の費用と、仲介業者に依頼して売った場合・買取業者に売った場合の価格や時間を、査定で比べてから判断しましょう。空き家の3,000万円特別控除には「相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで」に売るという要件もあるため(国税庁 No.3306)、売る時期を考える材料になります。

解体して更地にすれば売れやすくなりますか?

買い手によっては売りやすくなることがあります。ただし、解体費がかかり、住宅用地の特例(地方税法第349条の3の2)が受けられなくなるなどの注意点があります。「対処法③」のとおり、依頼先に「そのまま売る場合」と「更地にして売る場合」の価格を確かめてから決めましょう。

不動産会社に「この家は売れない」と言われました。もう手放すしかありませんか?

1社の判断だけで決める必要はありません。まずは売れないと言われた理由を聞き、この記事の7つの理由のどれに当たるかを確かめてみてください。そのうえで、ほかの仲介業者や、訳あり物件を扱う買取業者にも査定を依頼しましょう。それでも値段がつかない場合は、0円譲渡・空き家バンク・相続土地国庫帰属制度を比べてみてください。

この記事を書いた人

出口ガイド編集部 不動産業界20年以上。売買仲介・買取・収益物件・賃貸管理・ファンド運用に携わる。

宅地建物取引士公認 不動産コンサルティングマスター賃貸不動産経営管理士管理業務主任者
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