この記事の結論
再建築不可の家でも、再建築不可を扱う買取業者なら、買い取ってもらえる場合があります。
ただし、その前に「本当に再建築不可か」を役所で確かめるのが先です。2項道路のセットバックや、建築基準法43条2項の認定・許可などで建て替えられる可能性があれば、仲介業者(不動産会社)に依頼して、一般の買い手に売れることもあります。
建て替えが難しい、早く手放したいという場合は、買取が現実的な選択肢です。買取価格は、業者が「買った後にどう使うか」から逆算して決めるため一概には言えず、業者によって差が出ます。1社だけで決めず、複数社に査定を依頼して比べる、という順番で考えるのがおすすめです。
「再建築不可なので、うちでは扱いにくいですね」。相続した実家の売却を不動産会社に相談して、こう言われた。再建築不可の家では、こうした場面がよく起こります。ネットで「再建築不可 買取」と調べると買取業者の広告がたくさん出てきますが、業者に売ってしまってよいのか、仲介業者に依頼して売る道は本当にないのか、迷う方も多いはずです。
この記事では、不動産会社で売買仲介や買取に携わってきた立場から、まず「本当に再建築不可か」の確かめ方を押さえたうえで、仲介業者に依頼して売る方法と買取を比べ、買取業者が価格をどう決めているのかを解説します。

まず確認:その家は本当に「再建築不可」ですか?

「再建築不可」は法律の用語ではなく、「今の建物を壊すと、新しく建てられない土地」を指す、不動産業界での呼び方です。そう言われる理由としてよく出てくるのが、敷地が道路に接する条件(接道義務)を満たしていない、というものです。
ただ、不動産会社の担当者が現地や資料を見て「たぶん再建築不可です」と言っているだけの段階もあります。接している道が法律上どんな扱いになっているかは、役所で確認してはじめて分かることです。売り方を決める前に、まずここを確かめましょう。
再建築不可になる理由:「建築基準法上の道路」に2m以上接していない
建物の敷地は、建築基準法上の「道路」に2m以上接していなければなりません(建築基準法第43条第1項)。これを「接道義務」といいます。ここでいう道路は、原則として幅4m以上のものです(特定行政庁が指定した区域では6m以上。同法第42条第1項)。
家を新築したり建て替えたりするときは、工事の前に「建築確認」を受ける必要があります(同法第6条第1項)。接道義務を満たしていない敷地では、原則としてこの確認が下りないため、建て替えができません。
一方で、今建っている家をすぐに壊さなければならない、というわけではありません。住み続けたり、貸したりすることはできるのが一般的です。問題になるのは「壊した後に建てられない」ことで、これが買い手の幅を狭め、価格にも響きます。
「道」に見えても建築基準法上の道路でないことがある
建築基準法上の「道路」に当たるのは、主に次のようなものです(同法第42条)。
- 道路法による道路(国道・都道府県道・市町村道など)
- 都市計画法や土地区画整理法などによって造られた道路
- その地域に建築基準法のこの規定が適用されたときに、すでにあった幅4m以上の道
- 特定行政庁から位置の指定を受けて造られた私道(いわゆる位置指定道路)
- 幅4m未満でも、特定行政庁が指定した道(いわゆる2項道路。次の章で説明します)
見た目はふつうの道でも、これらのどれにも当たらない通路・私道・農道などは、建築基準法上の道路ではありません。現場でよく見かける再建築不可のパターンは、たとえば次のようなものです。
- 旗竿地(細い通路の奥に敷地がある土地)で、通路部分の幅が2mに足りない
- 家の前の道が、建築基準法上の道路として扱われていない通路や私道
- 道路までの通路が他人の土地で、自分の敷地が道路に接していない
さらに、自治体が条例で、敷地と道路の関係に条件を付けている場合もあります。たとえば東京都建築安全条例では、旗竿地のような「路地状敷地」について、通路部分の長さが20m以下なら幅2m、20mを超えると幅3mを原則として求めています(東京都建築安全条例第3条。ほかにも条件があります)。お住まいの自治体の条例も確認してください。

役所で確かめる方法と、持っていくもの
確認先は、市区町村(地域によっては都道府県)の建築指導課など、建築基準法上の道路を扱う窓口です。窓口の名前は自治体によって違うので、「建築基準法の道路の種別を確認したい」と伝えれば案内してもらえます。確認したいのは、次の3点です。
- 接している道が、建築基準法上の道路か(道路なら、どの種類か)
- 道の幅(2項道路なら、どこまで下がる必要があるか)
- 敷地が道路に接している長さ
行くときは、住所と地番、法務局で取れる公図・登記事項証明書、あれば地積測量図を持っていくと話が早く進みます。今の家を建てたときの建築確認の記録(建築計画概要書や、台帳に記載された内容の証明書など)を取れる自治体もあり、建てた当時の道路の扱いを確かめる手がかりになります。
自治体によっては、道路の種別を示した地図をインターネットで公開しています。ただし、あくまで目安として公開しているところが多いため、最終的には窓口で確認するのが確実です。
都市計画区域の外なら、接道義務はかからない
接道義務を含む建築基準法第3章の規定は、原則として都市計画区域と準都市計画区域の中だけに適用されます(同法第41条の2)。そのため、区域の外にある土地なら、接道を理由とする「再建築不可」には当たらない場合があります。田舎の実家などでは、特に確かめておきたい点です。ただし、区域の外でも別の法律や条例による制限がかかることはあるため、役所で確認してください。
「再建築不可」でも建て替えできる可能性がある3つのケース
役所で確認した結果、接道義務を満たしていないと分かっても、すぐにあきらめる必要はありません。次の3つのケースでは、建て替えできる可能性があります。建て替えられる土地として売れれば、買い手は広がり、価格も変わってきます。ただし、どれも役所の判断や隣地との交渉しだいで、確実にできるとは限りません。
2項道路に接している:セットバックすれば建て替えできる
幅4m未満の道でも、建築基準法の規定が適用されたときにすでに建物が立ち並んでいて、特定行政庁が指定した道は、道路とみなされます。これが「2項道路」です(建築基準法第42条第2項)。
2項道路では、原則として道の中心線から2m下がった線が道路の境界とみなされます。道の反対側が崖や川などの場合は、その崖や川の側の境界から4mの線が道路の境界になります。建て替えるときは、この線まで敷地を下げる(セットバックする)ことで、建築確認を受けられるようになります。
注意したいのは、下げた部分は道路とみなされるため、そこに建物などを建てられないことです(建築基準法第44条)。また、下げた部分は敷地面積にも入りません(建築基準法施行令第2条第1項第1号)。建てられる家の大きさが小さくなるため、建て替え後にどのくらいの家が建つかで、土地の価値の見え方が変わります。
43条2項の「認定」「許可」(旧ただし書き)を受けられる
建築基準法上の道路に2m以上接していなくても、一定の条件を満たせば建てられる仕組みがあります(建築基準法第43条第2項)。
- 認定(第1号):農道など、建築基準法上の道路ではないものの省令の基準に合う幅4m以上の道に2m以上接していて、建物の用途や規模が基準に合う(利用者が少ない)場合に、特定行政庁が交通上・安全上・防火上・衛生上支障がないと認めるもの。2018年の法改正でできた仕組みで、建築審査会の同意はいりません。
- 許可(第2号):敷地の周りに公園や広場などの広い空地がある、避難や通行の安全に十分な幅の通路で道路につながっているなど、省令の基準に合う場合に、特定行政庁が建築審査会の同意を得て許可するもの。2018年の改正前は「43条ただし書き」と呼ばれていた許可です。
具体的な基準や運用は自治体ごとに違い、建てる計画ごとに審査されます。書類や図面の準備に手間と時間がかかるため、建築士や役所に早めに相談するのが現実的です。認定・許可の見込みがある土地かどうかは、買い手にとっても大きな判断材料になります。
隣地の一部を買う、または隣地の所有者に売る
間口が2mにわずかに足りないような場合は、隣の土地の一部を買い取って接道を満たせることがあります。測量や境界の確定、土地を分ける登記(分筆)などの手間がかかります。
逆の発想として、隣地の所有者に買ってもらう方法もあります。隣地の所有者にとっては、敷地を広げられる、自分の土地と合わせて使いやすくなるといった利点があるため、実務の感覚でいえば、再建築不可の家では声をかけたい買い手候補の一つです。ただし、相手にその気や資金があるかどうかしだいで、価格も話し合いで決まります。
建て替えの可能性がある、あるいは隣地の所有者が関心を持ちそうなら、仲介業者に依頼して売ることも視野に入ります。可能性が低ければ、買取が中心になります。次の章で、この2つを比べます。
仲介業者に依頼するか、買取業者に売るか?向いているケースの比べ方
再建築不可の家の売り先は、大きく分けて「仲介業者に依頼して一般の買い手に売る」「隣地の所有者に売る」「買取業者に売る」の3つです。
| 売り方 | 向いている物件・人 | 価格の傾向 | 期間の目安 | 売った後の責任 |
|---|---|---|---|---|
| 仲介業者に依頼して一般の買い手に売る | 建物がそのまま住める・貸せる、立地がよい、建て替えの可能性がある | 買い手が見つかれば、3つの中で高くなる可能性がある | 現金で買える人に買い手が限られやすく、長引くことがある | 契約不適合責任を負うのが原則(特約で範囲を決める) |
| 隣地の所有者に売る | 隣地の所有者が敷地を広げたい・使いたいと考えている | 話し合いしだい | 相手の意向しだい。測量や境界の確定に時間がかかることも | 契約しだい |
| 買取業者に売る 建て替えが難しい場合 | 建て替えの見込みが低い、傷みが大きい、遠方で管理できない、早く手放したい | 仲介業者を通して売れる価格より下がるのが一般的。業者によって差が出る | 条件が合えば比較的短い(数週間〜数か月が一つの目安) | 免責の特約を付けるケースが多く、内容は契約しだい(契約書で確認) |
表は横にスクロールできます。期間・価格は、運営者の実務経験にもとづく一般的な目安で、物件や状況で大きく変わります。
仲介業者に依頼して売れる可能性がある再建築不可の家
仲介業者に依頼して売れる可能性があるのは、たとえば次のような家です。
- 建物の傷みが少なく、そのまま住める、または貸せる
- 駅や商店街が近いなど、立地がよい
- 隣地の所有者が買い手候補になりそう
- 前の章のように、建て替えできる可能性がある
一方で、仲介業者を通して売りにくい理由もはっきりしています。いちばん大きいのは、買う人が住宅ローンを使いにくいことです。再建築不可の物件は金融機関の担保の評価が低くなりやすく、融資を受けにくいことが多いため、買い手は現金で買える人に限られやすくなります(ローンが使えるかどうかは金融機関の判断で、一律に使えないわけではありません)。また、売買の際には、仲介業者が重要事項説明で接道の状況を買い手に説明します。説明を聞いて検討をやめる買い手もいます。
なお、価格の安い物件は仲介手数料の負担も気になるところです。物件価格が800万円以下の宅地・建物では、仲介業者があらかじめ説明して合意を得れば、原則の上限を超えて、最大で30万円の1.1倍(33万円)まで報酬を受け取れる特例があります(2024年7月から。国土交通省「不動産業による空き家対策推進プログラム」概要)。媒介契約の前に、手数料がいくらになるかを確認しておきましょう。
買取業者に売った方がよいケース
次のような場合は、買取業者に売る方が現実的です。
- 役所で確認した結果、建て替えの見込みが低い
- 雨漏りやシロアリなど建物の傷みが大きい、家財(残置物)が多く残っている
- 遠方に住んでいて管理できない、早く手放したい
- 仲介業者に依頼して売り出したが、問い合わせがほとんどない
- 売った後に不具合が見つかったときの責任を負いたくない
最後の「売った後の責任」は見落とされがちです。売った家に、契約の内容に合わない不具合(雨漏りなど)があった場合、売主は買主から修理や代金の減額などを求められることがあります(契約不適合責任。民法第562条〜第564条)。買取業者が買主の場合、この責任を負わない(免責)とする特約を付けるケースが多く、内容は契約しだいですが、古い家を売る側にとっては大きな安心材料になります。ただし、免責の特約があっても、売主が知りながら告げなかった不具合については責任を免れません(民法第572条)。知っている不具合は正直に伝え、契約書の条項を必ず確認してください。人が亡くなった家(事故物件)を売る場合の、告げる内容と売り方は、「事故物件を売る方法」で説明しています。
買取でも値段がつかないときの手放し方
建物の傷みが激しい、地域に再建築不可を扱う業者がいないなどの理由で、買取でも値段がつかない、または費用を払って引き取ってもらう話になることもあります。その場合の出口には、次のようなものがあります。
- 0円で譲る(無償譲渡):使いたい人と、手放したい人をつなぐマッチングのサービスや、自治体の空き家バンクを使う方法です。
- 隣地の所有者に贈与する:お金は入りませんが、固定資産税や管理の負担から離れられます。受け取った側に贈与税がかかる場合があるため、税務署や税理士に確認してください。
- 相続土地国庫帰属制度:相続した土地を国に引き取ってもらう制度です(2023年4月27日から)。ただし、建物がある土地は申請できないため、解体が必要です。通路など他人による使用が予定される土地や、境界が明らかでない土地なども申請できません(相続土地国庫帰属法第2条第3項)。審査手数料(土地1筆あたり14,000円)と負担金が必要で、承認されない場合もあります(法務省「相続土地国庫帰属制度」)。
それぞれの手順・費用と、ほかの手放し方との比べ方は、「田舎の空き家が売れない・値段がつかないときの手放し方」で説明しています。
再建築不可の買取価格はどう決まる?業者側の計算
「再建築不可の買取相場は、ふつうの物件の何割くらいですか」とよく聞かれます。ただ、実務の感覚でいえば、再建築不可の買取価格は「相場の何割」と一概には言えません。業者は、相場の割合ではなく「買った後にどうするか(出口)」から逆算して価格を出しているからです。この仕組みを知っておくと、業者ごとに提示額が違う理由や、価格を下げないために売り手ができることが見えてきます。
業者が考える「買った後の出口」
買取業者は、買い取った再建築不可の家を、主に次のような方法で活かそうと考えます。
- リフォームして貸す:自社で持って家賃を得るか、収益物件として投資家に売る。
- リフォームして住む人に売る:現金で買える人や、安く家を持ちたい人に売る。
- 隣地と一体にする:隣地の所有者に売る、または隣地の一部を買い足して建て替えできる土地にする。
- 建物を建てない使い方をする:解体して、駐車場や資材置き場などにする。
どの出口を取れるかは、物件の条件と、業者の得意分野で決まります。取れる出口の選択肢が多い業者ほど、価格を出しやすい傾向があります。
価格の考え方:再販できる価格から、費用と利益を引く
業者の買取価格の考え方を、言葉の式にすると次のようになります。
買取価格 ≒ 買った後に売れる(貸せる)と見込む価格 −(リフォーム・解体・残置物撤去の費用)−(登記・測量・税金などの諸費用)−(売れるまで持っている間の費用)−(業者の利益と、売れないリスクの分)
「貸す」出口なら、まず想定できる家賃を見込み、そこから投資家が求める利回りを当てはめて「収益物件としていくらで売れるか」を考えます。再建築不可の物件は、建物が使えなくなった後の見通しが立てにくいため、一般に投資家が求める利回りは高めになりやすく、その分、見込む再販価格は低くなりがちです。
ここから、工事費や諸費用、持っている間の固定資産税などを引き、さらに業者の利益と「思ったように売れない・貸せない」リスクの分を差し引いた残りが、買取価格になります。式の一つひとつの項目の見込み方が業者ごとに違うため、同じ家でも提示額に差が出るのです。

価格が上がる・下がる要因
同じ再建築不可でも、次のような点で価格は上下します。
- 通路や間口の幅と長さ(工事の車両や資材が入れるか)
- 建て替えできる可能性があるか(前の章の3つのケース)
- 建物の傷み(雨漏り・シロアリ・傾きなど)
- 上下水道やガスの引込管が、他人の土地を通っていないか
- 隣地との境界が確定しているか
- 家財などの残置物の量
- その地域に、再建築不可を扱う業者や、借りたい・買いたい人がいるか
売り手ができることもあります。書類をそろえておく(後の章で説明します)、残置物を減らしておく、そして複数の業者に査定を依頼して比べることです。業者が見込む費用やリスクが小さくなれば、その分、価格に反映される余地が生まれます。
「相場の◯割」と言えない理由
ネットでは「再建築不可の買取相場は通常の◯割」といった数字を見かけますが、その根拠が示されていることはほとんどありません。ここまで見てきたとおり、価格は業者の出口と物件の条件で大きく変わるため、割合だけで判断すると、高すぎる期待を持ったり、逆に安い提示額を「こんなものか」と受け入れたりしてしまいます。
なお、相続税の申告で使う土地の評価には、道路に接していない土地の評価の方法がありますが、これは税金を計算するための評価で、売買の相場ではありません。
だからこそ、1社だけで決めず、複数の業者に査定を依頼して、提示額とその根拠を比べることが大切です。再建築不可のほか、共有持分・借地・人が亡くなった家などの事情も含めた買取価格の決まり方と、業者の比べ方は、「訳あり物件の買取価格はどう決まる?」で説明しています。
2025年4月の法改正で、再建築不可の家のリフォームはどう変わった?
「法改正で、再建築不可の家はリフォームもできなくなった」という話を聞いて、不安になった方もいるかもしれません。実際には、変わったのは「一定の規模以上のリフォームに建築確認が必要になった」という点で、どんな工事でもできなくなったわけではありません。買い手は「買った後にどこまで直せるか」を気にするため、売り手も押さえておきたいところです。
何が変わったか:木造2階建ての大規模なリフォームに建築確認が必要に
2025年4月から、いわゆる「4号特例」が縮小され、建築確認の対象が見直されました。木造の家でいえば、次のように分かれます(建築基準法第6条第1項)。
- 2階建て以上の家、または延べ面積200㎡を超える平屋(新2号建築物):建築だけでなく、大規模の修繕・大規模の模様替をするときも建築確認が必要
- 延べ面積200㎡以下の平屋(新3号建築物):大規模の修繕・大規模の模様替は、建築確認の対象外
「大規模の修繕・模様替」とは、壁・柱・床・はり・屋根・階段(主要構造部)のうち、1種類以上について過半を直す工事のことです(同法第2条第14号・第15号)。国土交通省の案内では、階段の架け替えや屋根の全面的な改修などは該当し、屋根や壁の仕上げ材だけの改修は該当しないとされています。キッチン・トイレ・浴室などの水回りのリフォームや、手すり・スロープの設置は、手続きが不要とされています(国土交通省「建築基準法改正 建築確認」2025年3月版)。ただし、工事の内容によっては大規模なリフォームに当たる場合もあるため、個別の工事は役所や建築士に確認が必要です。

再建築不可の家への影響:確認が必要な工事は手続きが重くなる
木造2階建ての家では、主要構造部の過半に及ぶような大きなリフォームをするとき、建築確認の手続きが必要になりました。図面や建物の調査が必要になるなど、以前より手間と費用がかかります。
一方で、法律が変わる前から建っていて、今の基準に合わなくなった建物(既存不適格建築物)については、大規模の修繕・模様替をするときに、接道義務を今の基準で求めない扱いが2024年4月から設けられています(同法第86条の7、建築基準法施行令第137条の12)。ただし、用途の変更を伴わないことや、特定行政庁が交通上・安全上・防火上・衛生上支障がないと認めることなどの条件があり、無条件ではありません。
また、建てた当時から基準を満たしていなかった建物(違反建築物)は、既存不適格建築物には当たりません。古い家では建てた当時の記録が残っていないこともあるため、どちらに当たるかの確認には時間がかかることがあります。

売り手にとっての意味:査定のときに「どこまで直す前提か」を聞く
この改正は、買取業者や投資家が「買った後にどこまで手を入れるか」の計画、つまり前の章の出口に影響します。大がかりな工事を前提にする業者は、手続きの手間やリスクの分を価格に織り込みますし、内装や設備の入れ替えだけで貸せると見る業者は、別の価格を出すかもしれません。
査定を依頼したら、「買い取った後に、どんな工事をする前提の価格ですか」と聞いてみてください。提示額に差がある理由が分かり、業者を比べやすくなります。
売る前にやっておくこと:書類の準備と「解体」の注意
売る前に少し準備しておくだけで、査定がスムーズになり、業者ごとの提示額も比べやすくなります。
そろえておきたい書類
- 登記事項証明書:名義や、抵当権が残っていないかを確認します。
- 公図・地積測量図:敷地の形や、道路・隣地との位置関係が分かります。
- 建築確認の記録:建築計画概要書や、台帳に記載された内容の証明書など(取れるかは自治体によります)。検査済証が残っていれば一緒に。
- 固定資産税の納税通知書:評価額や税額が分かります。
- 親が買ったときの売買契約書・領収書:売った後の税金(取得費)に直結します。次の章で説明します。
名義が亡くなった親のままなら、売る前に相続登記が必要です。2024年4月1日から相続登記は義務になり、相続で取得したことを知った日から3年以内に登記しなければなりません。2024年4月1日より前に相続した不動産でまだ登記していない場合は、2027年3月31日までが期限です。正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料が科される可能性があります(法務省「相続登記の申請義務化」)。
先に解体しない方がよい理由

「古い家があると売れないから、更地にした方がいい」と考える方もいますが、再建築不可の家では、先に解体するのはおすすめしません。
理由の一つは、解体すると「建物を建てられない更地」が残るだけになり、買い手がさらに限られやすいことです。建物があれば「リフォームして住む・貸す」という出口が残りますが、更地になるとその道もなくなります。
もう一つは、固定資産税です。住宅が建っている土地は、課税標準が200㎡以下の部分で6分の1、200㎡を超える部分で3分の1に軽減される特例があります(住宅用地の特例。地方税法第349条の3の2)。解体して住宅がなくなると、原則としてこの特例が受けられなくなり、土地の固定資産税が上がる可能性があります。
なお、建物を残していても、放置して傷みが進み、空家法にもとづいて「管理不全空家」や「特定空家」として市区町村から勧告を受けると、この特例は外れます(国土交通省「固定資産税等の住宅用地特例に係る空き家対策上の措置」。管理不全空家は2023年12月13日施行の改正で新設。国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報」)。放置せず、早めに出口を決めることが大切です。
解体するかどうかは、買取業者の査定を取ってから判断しましょう。業者が解体を前提に買い取ることもあり、その場合は売り手が先に解体費用を払う必要はありません。
再建築不可の家を売ったときの税金
家を売って利益(譲渡所得)が出た場合は、売った翌年に確定申告をして税金を納めます。再建築不可の家は売却額が低くなりやすい分、手元に残る金額を左右する税金の計算も押さえておきたいところです。
譲渡所得と取得費:親の売買契約書を探しておく
譲渡所得は、売った金額から、取得費(買ったときの代金など)と、売るためにかかった費用(仲介手数料など)を差し引いて計算します(国税庁 No.3202)。
相続した不動産では、亡くなった親が買ったときの代金をもとに取得費を計算し、取得した日も親の取得日をそのまま引き継ぎます。相続のときに払った登記費用なども、業務に使っていない土地建物なら取得費に含められます(国税庁 No.3270)。建物は、年数に応じて価値が減った分を差し引きます(国税庁 No.3261)。
ここで大きく差が出るのが、親が買ったときの売買契約書や領収書があるかどうかです。残っておらず、ほかの資料でも買ったときの金額が分からない場合は、売った金額の5%を取得費とする方法(概算取得費)を使うことになります(国税庁 No.3258)。この場合、相続のときの登記費用などは取得費に足せません(国税庁 No.3270)。取得費が小さくなる分、利益が大きく計算されて税金が高くなることがあります。ほかに金額が分かる資料がないかは、税務署や税理士に確認してください。売ることを考え始めたら、まず親の売買契約書や領収書を探しておきましょう。
相続税を納めた場合は、相続開始の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに売れば、納めた相続税の一部を取得費に加えられる特例もあります(国税庁 No.3267)。
税率:所有期間5年超かどうか
税率は、売った年の1月1日時点で所有期間が5年を超えるかどうかで変わります(国税庁 No.3208・No.3211)。
| 区分 | 所得税 | 住民税 |
|---|---|---|
| 長期(所有期間5年超) | 15% | 5% |
| 短期(所有期間5年以下) | 30% | 9% |
このほか、基準所得税額の2.1%の復興特別所得税がかかります。2027年1月1日以後に生じる所得からは防衛特別所得税の創設などの改正があるため、売る年の国税庁の情報を確認してください。
相続した不動産の所有期間は、親が取得した日から数えます(国税庁 No.3270)。親が長く持っていた実家なら、相続してすぐに売っても長期になることが多いです。
空き家の3,000万円特別控除は使える?再建築不可ならではの注意
親が1人で住んでいた家を相続して売った場合、一定の要件を満たせば、譲渡所得から最高3,000万円を差し引ける特例があります(国税庁 No.3306)。主な要件は次のとおりです。
- 2027年12月31日までに売ること(2016年4月1日以後の売却が対象)
- 家が昭和56年(1981年)5月31日以前に建てられたもので、区分所有の建物(マンションなど)でないこと
- 相続の直前に、亡くなった方以外に住んでいた人がいなかったこと(老人ホームに入所していた場合などは、一定の要件で対象になります)
- 相続の時から売る時まで、事業・貸付け・居住に使っていないこと
- 相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること
- 売却代金が1億円以下であること
- 家を売る場合は、売る時に一定の耐震基準を満たしていること。または、家を取り壊してから土地を売ること
- 2024年1月1日以後の売却では、売った年の翌年2月15日までに、耐震基準を満たすようになるか取り壊された場合も対象
- 親子・夫婦など特別の関係がある人への売却でないこと
- その家と土地を相続(遺贈を含む)で取得した相続人が3人以上の場合(2024年1月1日以後の売却)は、1人あたり2,000万円まで
このほか、同じ家と土地について、先ほどの相続税の取得費加算の特例など、ほかの特例を受けていないことも要件です。
再建築不可の家で悩ましいのは、耐震の要件です。家を残したまま売るなら、耐震基準を満たしている(または売った年の翌年2月15日までに満たすようになる)必要があります。取り壊して売れば要件は満たしやすくなりますが、前の章のとおり、再建築不可の更地は買い手がさらに限られやすくなります。買取業者が家を残して使う前提なのか、取り壊す前提なのかで、特例が使えるかどうかが変わる可能性があるため、契約の前に、税務署や税理士に要件を満たせるかを確認してください。
再建築不可の買取業者の選び方:複数社に査定を依頼する
ここまで見てきたように、買取価格は業者の出口や工事の前提で変わります。だからこそ、業者選びが手元に残る金額を大きく左右します。
1社だけで決めない理由
業者ごとに、得意な出口(貸す・売る・隣地と一体にする)、得意な地域や物件の種類、リスクの取り方が違います。そのため、同じ家でも提示額に差が出ます。1社の提示額だけでは、それが高いのか安いのか判断できません。再建築不可を扱う業者に、複数社で査定を依頼して比べるのが基本です。
査定で比べること・確認すること
- 提示額の根拠:どんな出口、どんな工事を前提にした価格か。
- 売った後の責任:契約不適合責任を免責にするか、するならどこまでか。
- 費用の負担:解体・残置物の撤去・測量の費用は、どちらが負担するか。
- お金と引き渡しの時期:手付金の額、代金を受け取る時期、引き渡しの時期。
- 宅地建物取引業の免許:不動産を業として売買するには免許が必要です(宅地建物取引業法第3条)。免許番号は、国土交通省の「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」で確認できます。
避けたい業者のサイン
- 「今日決めてくれれば高く買います」など、契約を急がせる
- 提示額の根拠を聞いても、はっきり説明しない
- 契約書の免責や費用負担について、説明がない・あいまい
- 査定額を高く出しておいて、契約の直前に、根拠の説明がないまま大きく下げる
不安を感じたら、その場で決めず、ほかの業者の提示額や条件と比べてから判断してください。
よくある質問
再建築不可の家は、住宅ローンを使って買ってもらえないのですか?
一律に使えないわけではありませんが、金融機関の担保の評価が低くなりやすく、融資を受けにくいことが多いのが実情です。使えるかどうかは金融機関の判断になります。そのため、仲介業者に依頼して売る場合は、現金で買える人が中心になりやすくなります。
2025年4月以降、再建築不可の家はリフォームできなくなったのですか?
できなくなったわけではありません。2階建て以上の家などで、主要構造部の過半に及ぶ大規模な修繕・模様替をするときに、建築確認が必要になりました。水回りの入れ替えなどは手続きが不要とされています。個別の工事が当てはまるかは、役所や建築士に確認してください。
解体して更地にした方が売れやすいですか?
再建築不可の場合は、かえって売りにくくなることがあります。「建物を建てられない更地」になって買い手がさらに限られやすいうえ、固定資産税の住宅用地の特例が受けられなくなり、税額が上がる可能性があります。空き家の3,000万円特別控除を使う場合は、耐震や取壊しの要件も関係します。解体するかどうかは、査定を取ってから判断しましょう。
買取業者に売った後で、雨漏りなどが見つかったら責任を負いますか?
契約しだいです。買取業者が買主の場合は、契約不適合責任を負わない(免責)とする特約を付けるケースが多いものの、内容は契約しだいです。契約書の条項を必ず確認してください。また、免責の特約があっても、知りながら告げなかった不具合については責任を免れません(民法第572条)。知っている不具合は、契約前に伝えておきましょう。
