田舎の空き家が売れない・値段がつかないときの手放し方|0円譲渡・空き家バンク・国庫帰属を比較

田舎の空き家が売れないとき|値段がつかないときの手放し方を比べる

この記事の結論

田舎の空き家に「値段がつかない」と言われても、手放す前に、本当に値段がつかないかを確かめましょう。地元の仲介業者(不動産会社)と広い地域を扱う仲介業者、田舎の物件も扱う買取業者、隣地の所有者に当たってみる価値があります。2024年7月からは、800万円以下の家や土地でも、仲介業者が報酬を受け取りやすくなっています(手数料は事前に確認)。

それでも値段がつかなければ、空き家バンク・0円譲渡・隣地への譲渡で引き受けてくれる相手を探し、建物を解体できるなら相続土地国庫帰属制度も比べます。まだ相続の手続きをしていなければ、相続放棄(原則3か月以内)も選択肢です。

0円で譲る場合も、登記の費用を誰が負担するかを決めておく必要があり(受け取る側には贈与税がかかる場合があります)、農地なら農地法の許可も必要です。名義が親のままなら、まず相続登記(2024年4月1日より前の相続は2027年3月31日まで)を済ませておきましょう。

「地元の不動産会社に相談したら、値段がつかないと言われた」「ポータルサイトに出しても、問い合わせが一件もない」。親から相続した田舎の家が空き家のまま、固定資産税の通知と草刈りの心配だけが続いている。

田舎の空き家でも、手放す道はいくつかあります。ただ、方法ごとに、お金が入るのか出ていくのか、建物を残せるのか、どんな条件があるのかがまったく違います。順番を間違えると、解体してから使えない制度だと分かることもあります。

この記事では、不動産の売買仲介や買取に携わってきた立場から、手放す前の確かめ方と、7つの手放し方の比べ方、0円で譲るときの税金と費用、農地・山林が付いている場合の注意を、順番に解説します。

田舎の空き家を手放すまでの順番の図。1「本当に値段がつかないか確かめる」:仲介業者(地元・広い地域の両方)、買取業者(複数社)、隣地の所有者。値段がつかない場合は、2「引き受け手を探す」:空き家バンク、0円譲渡、隣地への譲渡。引き受け手がいない場合は、3「国の制度を検討する」:相続土地国庫帰属制度(建物がある土地は申請できない(解体が必要)。承認されない場合もある)。その下に「譲る・売る前に:名義が親のままなら相続登記、共有なら共有者全員の合意(相続土地国庫帰属制度の申請も、共有者全員で行う)」。別枠に「まだ相続の手続きをしていない場合:相続放棄も選択肢(相続の開始を知った時から原則3か月以内に家庭裁判所へ。実家だけでなく、すべての財産を相続しないことになる)」。

田舎の空き家に値段がつかない主な理由

山あいの集落に建つ、瓦屋根の古い木造の家。田舎の空き家のイメージ
※画像はイメージです

値段がつかない理由が分かると、どの手放し方が合うかも見えてきます。田舎の空き家でよくある理由は、次の3つです。

買い手が少なく、取引そのものが少ない

人口が減っている地域では、家を探している人自体が少なく、価格を下げても問い合わせが来ないことがあります。全国の空き家は900万2千戸と過去最多になっています(総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計 結果の概要」)。

建物の解体や修繕の費用が、土地の価格を上回ることがある

古い建物は、買い手から見ると、解体や修繕にかかる費用でもあります。業者は、買った後にかかる費用を差し引いて価格を考えるため、土地の価格が低い地域では、差し引いた結果として値段がつかないことがあります。価格の決まり方は「再建築不可の家は買取で売れる?」でも説明しています。都市計画区域などの中で、家が建築基準法上の道路に接していない再建築不可の場合(建築基準法第43条第1項)は、さらに買い手が限られます。区域の外なら、この接道の決まりはかかりません。確かめ方は同じ記事で説明しています。

農地や山林が付いている、境界がはっきりしない

農地は、原則として農業委員会の許可がなければ売ることも譲ることもできず(農地法第3条)、買える人が限られます。また、境界が明らかでない土地は、買い手が不安に感じるだけでなく、相続土地国庫帰属制度でも申請できません(相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(相続土地国庫帰属法)第2条第3項)。

手放す前に、本当に値段がつかないかを確かめる

0円で譲る、国に引き取ってもらうといった方法は、お金が入らないか、むしろ出ていく方法です。1社に「値段がつかない」と言われただけで決めてしまう前に、売れる可能性がないかを確かめておく価値があります。値段がついて売れた場合は、一定の要件を満たせば空き家の3,000万円特別控除を使えることがあります。2027年12月31日までの売却であることに加えて、相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることなどの要件があります(国税庁 No.3306)。

仲介業者は、地元の業者と広い地域を扱う業者の両方に当たる

仲介業者(不動産会社)に依頼して売る場合、実務の感覚でいえば、地元の業者は、隣地の方や近所で家を探している人など、地域の買い手を知っていることがあります。一方で、広い地域を扱う業者は、移住や別荘を考えている遠方の人に情報を届けられることがあります。

安い家は仲介業者の報酬も少なくなるため、これまでは引き受けてもらいにくい面がありました。2024年7月1日から、代金が800万円以下の宅地や建物(低廉な空家等)の売買の仲介では、仲介業者は、媒介に必要な費用を考慮して、通常の計算方法による金額を超えて、依頼者から30万円の1.1倍(33万円)まで報酬を受け取れるようになりました(「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」(昭和45年建設省告示第1552号)第七、宅地建物取引業法第46条)。この報酬額は、媒介契約を結ぶときにあらかじめ、上限の範囲内で依頼者に説明し、合意しておく必要があるとされています(国土交通省「空き家等に係る媒介報酬規制の見直し」概要)。手数料が通常の計算より高くなる場合があるので、媒介契約の前に金額を確認しておきましょう。

実務の感覚でいえば、価格の低い空き家では、仲介ではなく、業者が自ら買い取る形や、業者が売主と売買契約を結んだうえで、所有権は売主から業者が見つけた買主へ直接移す形(いわゆる三為契約。「第三者のためにする契約」を使った取引)を提案されることも多くあります。報酬に上限がある仲介より、業者にとって採算をとりやすいためで、こうした提案自体は珍しいものではありません。ただ、売る側から見ると、仲介業者に依頼して売る場合とは、受け取る金額の決まり方が違います。提案を受けたら、それが「仲介」なのか、業者が買い取る・三為契約で転売する取引なのかを確かめ、ほかの業者の査定額や、仲介業者に依頼して売った場合の見込み価格と比べてから決めましょう。

買取業者にも、複数社で当たる

買取業者は、再び売る、貸す、解体して土地で売るなど、買った後の出口を考えて価格を出します。出口や得意な地域は業者ごとに違うため、1社で値段がつかなくても、別の業者が値段をつけることがあります。比べるときは、価格だけでなく、家財の撤去や解体の費用をどちらが負担するか、契約不適合責任を負わない(免責)特約にするか、宅地建物取引業の免許があるか(宅地建物取引業法第3条)も確認します。免許番号は、国土交通省の「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」で調べられます。確認する項目は「再建築不可の家は買取で売れる?」でも詳しく説明しています。

隣地の所有者に声をかける

隣地の所有者は、敷地を広げたい、畑や駐車場、資材置き場にしたいといった理由で、買い手や、無償でも引き受けてくれる相手になることがあります。直接話す場合でも、価格や境界、登記の手続きは、仲介業者や司法書士、土地家屋調査士に関わってもらうと、後のトラブルを防ぎやすくなります。

解体や片付けは、手放し方を決めてから

相続土地国庫帰属制度を使うなら建物の解体が必要ですが、空き家バンクや0円譲渡では、建物を使いたいという相手もいます。先に解体すると、その相手を逃すうえ、1月1日の時点で住宅が建っていない土地は住宅用地の特例(地方税法第349条の3の2)の対象にならないため、原則として翌年度から土地の固定資産税が上がる可能性があります(賦課期日は地方税法第359条)。解体費の補助制度の有無や条件は、市町村の空き家の担当窓口に確認してください。

値段がつかない空き家の手放し方7つ:費用・条件・向いている家を比べる

売れる見込みがないと分かったら、手放し方を比べます。主な方法は次の7つです。

手放し方お金主な費用建物主な条件・注意向いている家
①空き家バンク売買なら入る。無償の場合もある仲介業者が入れば仲介手数料残したままでよい仕組み・条件は自治体ごとに違う住める状態に近い家、移住の需要がある地域
②0円譲渡(マッチング・個人間)入らない登記費用(誰が負担するかは話し合い)、相続登記残したままでよい受け取る側に贈与税などがかかる場合。法人に譲ると譲る側に所得税の場合建物を使いたい人がいそうな家
③隣地への譲渡0円または低い価格登記費用、測量が必要な場合はその費用残しても、解体してもよい(相手しだい)著しく低い価格での売買は贈与とみなされる場合隣地の所有者が土地を使えそうな家・土地
④自治体・法人への寄付入らない相手の条件による相手しだい受け付けるかどうかは相手しだい。自治体以外の法人への寄付は所得税の場合相手に使い道がある土地
⑤相続土地国庫帰属制度払う解体費、審査手数料(1筆14,000円)、負担金解体が必要申請できない土地・承認されない土地がある解体でき、境界がはっきりした土地
⑥有料の引き取りサービス払う事業者が示す費用事業者しだい契約前に名義変更・費用の内訳・免許を確認ほかの方法で相手が見つからない場合の候補
⑦相続放棄(すべての財産を相続しない)手続きを専門家に頼む場合の報酬—原則3か月以内。実家だけを選んで放棄できないまだ相続の手続きをしていない人

表は横にスクロールできます。費用や条件は一般的な傾向で、物件や地域、相手によって変わります。

雨戸が閉まり、庭に雑草が伸びた空き家。引き受け手を探している空き家のイメージ
※画像はイメージです

① 空き家バンクに登録する

空き家バンクは、自治体が空き家の情報を集めて、住みたい人や使いたい人に紹介する仕組みです。各自治体の情報を横断して探せる「全国版空き家・空き地バンク」もあります(国土交通省「空き家・空き地バンク総合情報ページ」)。登録の窓口や条件、仲介業者が間に入るか、当事者どうしで交渉するかといった仕組みは自治体ごとに違うので、家のある市町村に確認しましょう。

向いているのは、住める状態に近い家や、移住・二地域居住を考える人がいる地域の家です。

② 0円で譲る(無償譲渡):マッチングサービスや個人間で

建物や土地を使いたい人に、無償で譲る方法です。マッチングサービスや、知人・地域のつながりで相手を探します。お金は入りませんが、固定資産税や管理の負担から離れられます。

流れは、相手を探す、条件(建物は現状のまま渡す、家財の処分、登記の費用や税金の負担など)を書面で決める、贈与契約を結ぶ、所有権の移転登記をする、という順です。兄弟などと共有している場合は、家全体を譲るには共有者全員がそれぞれの持分を譲ることになるため、全員の同意が必要です(民法第251条も参照)。話がまとまらない場合は「共有持分だけを売る方法」も参考にしてください。名義が親のままなら、先に相続登記が必要です(期限は後の「0円で譲るときの税金と費用」で説明します)。

0円でも税金がかかる場合があります(後の「0円で譲るときの税金と費用」で説明します)。向いているのは、倉庫や作業場、週末の住まいなど、建物を使いたい人がいそうな家です。

③ 隣地の所有者に譲る(贈与・低い価格での売買)

隣地の所有者には、無償で贈与する方法も、低い価格で売る方法もあります。ただし、個人が時価より著しく低い価格で買うと、時価との差額は、売った人からの贈与により取得したものとみなされます(相続税法第7条、国税庁 No.4423)。土地や家屋の時価は、通常の取引価額に相当する金額とされています(国税庁 No.4423)。境界の確認や登記は、土地家屋調査士や司法書士に相談しましょう。

④ 自治体や法人に寄付する:受け付けるかどうかは相手しだい

自治体に土地や建物を寄付する方法もありますが、受け付けるかどうかは自治体しだいなので、事前に家のある市町村に確認しましょう。地域の団体などの法人に寄付する場合も、相手に使い道があることが前提です。

税金の扱いは、寄付する相手で変わります。自治体以外の法人(地域の団体や会社など)に贈与した場合は、時価で譲渡したものとみなされ、譲る側に譲渡所得の税金がかかる場合があります(国税庁 No.3105、所得税法第59条第1項)。一方、国や地方公共団体への贈与は、このみなし譲渡の対象になりません(租税特別措置法第40条第1項)。法人への寄付を考えるときは、事前に税務署や税理士に確認してください。

⑤ 相続土地国庫帰属制度:建物を解体すれば、土地を国に引き取ってもらえる場合がある

相続や遺贈(相続人への遺贈)で土地を取得した人が、法務大臣の承認を受けて、土地を国に引き渡す制度です。2023年4月27日に始まりました(法務省「相続土地国庫帰属制度について」)。ただし、建物がある土地は申請できないため、空き家の場合は解体が前提になります。申請できない土地・承認されない土地の条件や費用は、次の章で詳しく説明します。

向いているのは、建物を解体でき、境界がはっきりしていて、ほかに引き受けてくれる相手がいない土地です。

⑥ お金を払って引き取ってもらう:契約の前に確かめること

費用を受け取って土地や建物を引き取る事業者もあります。ほかに相手が見つからない場合の候補にはなりますが、契約の前に次の点を確かめましょう。

あわせて知っておきたいのが、「原野商法の二次被害」です。土地の処分に困っている人に「土地を買い取る」などと持ちかけて、調査や整地の費用、手数料などの名目でお金を支払わせたり、売却と一緒に別の高い土地を買わせたりする手口について、公的機関が注意を呼びかけています(政府広報オンライン、国民生活センター 見守り新鮮情報 第457号)。土地の処分を名目にお金を求められたら、その場で決めずに家族に相談し、不審に感じたら消費者ホットライン「188」に相談しましょう。

⑦ 相続放棄:まだ相続の手続きをしていない人が選べる方法

相続放棄をすると、その相続については、初めから相続人とならなかったものとみなされます(民法第939条)。そのため、田舎の家だけを選んで放棄することはできず、預貯金なども含めて相続しないことになります。放棄は、原則として自分のために相続が始まったことを知った時から3か月以内に(民法第915条第1項)、家庭裁判所に申述して行います(民法第938条、裁判所「相続の放棄の申述」)。

注意したいのは、放棄する前に、家を売ったり人に譲ったりするなど相続財産を処分すると、単純承認をしたものとみなされ、放棄できなくなることがある点です(民法第921条)。また、放棄の時に家を現に占有していた人は、引き渡すまでの間、その家を保存する義務を負います(民法第940条第1項)。相続人全員が放棄して相続人がいなくなった場合は、利害関係人などの請求によって、家庭裁判所が相続財産の清算人を選び(民法第952条)、処分されなかった財産が最終的に国庫に帰属します(民法第959条)。放棄するかどうかは、親の財産全体を見て、弁護士や司法書士に相談して判断してください。

相続土地国庫帰属制度の流れと費用:空き家は解体が前提

山林のふもとに広がる、建物のない空き地のイメージ
※画像はイメージです

国に引き取ってもらうには、条件と費用があります。

申請できる人と、申請できない土地・承認されない土地

申請できるのは、相続や遺贈(相続人への遺贈)で土地を取得した人です。共有の土地は、共有者全員が共同で申請する必要があります(相続土地国庫帰属法第2条第2項)。相続登記がまだでも、相続や遺贈で取得した土地なら申請できるとされています(法務省「相続土地国庫帰属制度に関するQ&A」)。

次のような土地は、そもそも申請できません(相続土地国庫帰属法第2条第3項)。

  • 建物がある土地
  • 抵当権などの担保権や、使用・収益のための権利(賃借権など)が設定されている土地
  • 通路など、他人による使用が予定される土地を含む土地
  • 土壌汚染がある土地
  • 境界が明らかでない土地など、所有権の存否や範囲に争いがある土地

申請はできても、次のような土地は承認されません(相続土地国庫帰属法第5条第1項)。

  • 一定の基準に当たる崖があり、管理に過分の費用や労力がかかる土地
  • 管理や処分の妨げになる工作物、車両、樹木などが地上にある土地
  • 取り除かなければ管理や処分ができない物が地下にある土地
  • 隣の土地の所有者などと争わなければ管理や処分ができない土地
  • そのほか、通常の管理や処分に過分の費用や労力がかかる土地

農地や森林も申請できます(法務省 Q&A)。

費用:解体費・審査手数料・負担金

かかる費用は、大きく分けて次の3つです。

  • 解体費:建物がある場合は、解体してからの申請になります。複数の解体業者に見積もりを取りましょう。
  • 審査手数料:土地1筆あたり14,000円で、申請書に収入印紙を貼って納めます。申請を取り下げた場合や、却下・不承認になった場合でも返還されません(法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」)。
  • 負担金:承認されると、土地の種目ごとに、管理にかかる10年分の標準的な費用を考慮して算定した負担金を納めます(相続土地国庫帰属法第10条第1項)。金額は土地の種目と区域で決まり、面積に応じて算定する土地もあります。法務省のページに算定方法と自動計算シートがあり、隣り合う同じ種目の土地を1つの土地とみなして算定するよう申し出られる特例もあります(法務省「負担金の算定」)。

申請書類の作成を専門家に頼む場合は、その報酬もかかります。業務として申請書類の作成を代行できるのは、弁護士、司法書士、行政書士に限られています(法務省「相続土地国庫帰属制度における専門家の活用等について」)。

相続土地国庫帰属制度の流れと費用の図。1 法務局に相談(申請できない土地・承認されない土地に当たらないかを、解体の前に確かめておく)、2(建物があれば)解体(建物がある土地は申請できない。解体費がかかる)、3 申請(審査手数料:土地1筆あたり14,000円。却下・不承認でも返還されない)、4 審査(書面・実地調査)(承認されない場合もある。例:一定の勾配・高さの崖がある、地下に除去が必要な物があるなど)、5 承認、6 負担金を納める(承認後に納める。通知が届いた日の翌日から30日以内、納めないと承認は失効。額は、10年分の標準的な管理費用を考慮して算定)、国庫に帰属。注記:申請できない土地(却下)の例は、建物がある、境界が明らかでない、担保権などの権利が設定されている、土壌汚染があるなど。

申請から国庫に帰属するまでの流れ

流れは、法務局に相談する、土地のある都道府県の法務局・地方法務局の本局に申請する(審査手数料)、書面や実地での審査、承認・不承認の通知、負担金の納付、国庫に帰属、という順です(法務省「制度の概要」)。審査の標準処理期間は8か月とされ、事案によってはそれを超える場合もあります(法務省 Q&A)。

負担金は、通知を受けた日から30日以内に納めないと、承認の効力がなくなります(相続土地国庫帰属法第10条第3項)。納めた時点で、土地の所有権が国に移ります(相続土地国庫帰属法第11条第1項)。

解体してから「この土地は承認されない」と分かると、解体費だけがかかってしまいます。法務局では制度の利用についての相談を受け付けているので(法務省「制度の概要」)、解体の前に、申請できない土地や承認されない土地に当たりそうな点がないかを相談しておくと安心です。

0円で譲るときの税金と費用:誰が何を負担するか

「0円で譲るのだから、お金はかからない」とは限りません。受け取る側、譲る側それぞれに税金がかかる場合があり、登記の費用もかかります。

0円で譲るとき、誰が何を負担するかの図。譲る側:相続登記(名義が親のままなら先に済ませる。登録免許税:価格の1,000分の4)、法人に譲るとき(「みなし譲渡」で所得税がかかる場合がある)、その年の固定資産税(1月1日時点の所有者にかかる)。負担する人を話し合いで決める:贈与の登記の費用(登録免許税〈額は税率で決まる:価格の1,000分の20〉・司法書士の報酬)、家財の処分、固定資産税の精算、現状のまま引き渡す取り決め(書面で決めておく)。受け取る側:贈与税(かかる場合がある。暦年課税の基礎控除は年110万円)、不動産取得税(かかる場合がある)。下に「農地は、農地のまま譲るには原則として農業委員会の許可(農地法)が必要」。注記:登録免許税の「価格」は、原則として固定資産課税台帳の価格。個別の判断は、税務署・税理士に確認を。

受け取る側:贈与税と不動産取得税

個人が無償で不動産を受け取ると、贈与税の対象になります。贈与税は、その年の1月1日から12月31日までに受けた贈与の合計額から、基礎控除の110万円を差し引いた残りにかかります(国税庁 No.4402)。また、不動産取得税は不動産を取得した人にかかり(地方税法第73条の2第1項)、相続による取得は非課税ですが(地方税法第73条の7)、贈与による取得は課税の対象です。

受け取る側の税金は、相手が引き受けをためらう理由にもなります。受け取る側にも、税務署や税理士に確認してもらうよう伝えておきましょう。

登記の費用:登録免許税は税率で決まる。誰が負担するかは話し合いで

贈与による土地の所有権の移転登記にかかる登録免許税は、土地・建物とも、固定資産課税台帳の価格の1,000分の20です(国税庁 No.7191)。登記を司法書士に頼む場合は、その報酬もかかります。登録免許税の額は税率で決まるため、話し合いで決めるのは、これらの費用を譲る側・受け取る側のどちらが負担するかです。契約の前に書面で決めておくと、後でもめにくくなります。

名義が親のままなら、その前に相続登記が必要です。相続による所有権の移転登記の登録免許税は1,000分の4です(国税庁 No.7191)。相続登記は2024年4月1日から義務になっており、それより前の相続でまだ登記していない場合は2027年3月31日が期限です(不動産登記法第76条の2、法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」)。

譲る側:法人に譲るときは「みなし譲渡」に注意

法人に贈与した場合や、法人に時価の2分の1未満の価格で譲った場合は、時価で譲渡があったものとされ、譲る側に譲渡所得の税金がかかる場合があります(国税庁 No.3105、所得税法第59条第1項)。時価による譲渡とみなされる贈与は、法人に対するものなどに限られています(所得税法第59条第1項)。マッチングの相手が法人の場合は、事前に税務署や税理士に確認しましょう。

固定資産税は、毎年1月1日(賦課期日)の状況をもとに課税されます(地方税法第359条)。年の途中で譲る場合、その年度の税金をどう分けるかは、当事者の話し合いで決めます。

0円でも、建物の状態と引き渡しの条件を決めておく

贈与した人は、贈与の目的として特定した時の状態で引き渡すことを約束したものと推定されます(民法第551条第1項)。分かっている不具合(雨漏りやシロアリなど)は伝え、現状のまま引き渡すことや、家財を誰が処分するかを契約書に書いておきましょう。

農地・山林が付いている田舎の実家の注意

古い家の裏に広がる、耕作されていない畑のイメージ
※画像はイメージです

家と一緒に田畑や山林を相続している場合は、家とは別の手続きが必要になります。

農地を譲る・売るには、農業委員会の許可が必要

農地を農地のまま売ったり贈与したりするには、原則として農業委員会の許可が必要です(農地法第3条第1項)。許可を受けないでした売買や贈与は、効力を生じません(農地法第3条第6項)。以前は、取得する人に一定の経営面積を求める「下限面積要件」がありましたが、2023年4月1日に廃止されています(北九州市「農地の手続き」)。

農地を宅地や駐車場など農地以外にする目的で譲る場合は、転用のための許可が必要です(農地法第5条第1項)。市街化区域内の農地は、あらかじめ農業委員会に届け出れば許可はいりません(農地法第5条第1項第6号)。

相続で農地を取得した場合は、許可はいりませんが、遅滞なく農業委員会に届け出る必要があります(農地法第3条の3)。迷ったら、農地のある市町村の農業委員会に相談してみましょう。相続土地国庫帰属制度でも農地は申請でき、事前に農業委員会に相談できるとされています(法務省 Q&A)。

山林の所有者になったら、市町村への届出が必要

地域森林計画の対象になっている民有林について、新たに森林の土地の所有者になった人は、市町村長に届け出なければなりません(森林法第10条の7の2第1項)。林野庁の案内では、売買や相続などで森林の土地を取得した人は、面積にかかわらず、所有者になった日から90日以内に届け出るとされています(国土利用計画法の土地売買契約の届出をしている場合は対象外。林野庁「森林の土地の所有者届出制度」)。地域森林計画の対象の森林を譲る場合は、受け取る側にもこの届出が必要になることを伝えておきましょう。

山林や原野は、家よりもさらに引き受け手が限られることがあります。相続土地国庫帰属制度では森林も申請でき(法務省 Q&A)、負担金は面積に応じて算定される場合があります(法務省「負担金の算定」)。

手放せないまま持ち続ける場合の費用とリスク

引き受け手が見つかるまで、持ち続けるのもひとつの選択です。かかり続ける費用とリスクを、手放す費用と比べて判断しましょう。放置したときのリスクは、相続した実家が売れない理由と対処法の記事でも詳しく説明しています。

固定資産税と管理の手間はかかり続ける

固定資産税は、毎年1月1日の状況をもとに課税され(地方税法第359条)、住んでいない家でも持っている限りかかります。住宅が建っている土地は住宅用地の特例で税額が軽くなっています(地方税法第349条の3の2)。一方で、同じ市町村の中に持っている土地や家屋の課税標準額の合計が、土地は30万円、家屋は20万円に満たない場合は、原則として固定資産税はかかりません(地方税法第351条。市町村が条例で課税できる例外もあります)。毎年届く納税通知書の課税明細で、実際の金額を確認しておきましょう。税金のほか、草刈りや見回り、保険、交通費もかかります。

管理不全空家・特定空家と、近所への責任

管理が十分でない空き家は、市町村から指導や勧告を受けることがあり(空家等対策の推進に関する特別措置法(空家法)第13条、空家法第22条)、勧告を受けると、その敷地は住宅用地の特例の対象から外れます(地方税法第349条の3の2第1項)。また、屋根材が飛ぶ、塀が倒れるなどして他人に損害を与えたときは、占有者や所有者が賠償の責任を負うことがあります(民法第717条第1項)。

状況別の選び方:あなたの空き家はどの手放し方から試すか

どの場合も、名義が親のままなら相続登記を済ませること、共有なら共有者全員の考えをそろえること、そして複数の業者に当たって本当に値段がつかないかを確かめることが出発点です。

田舎の空き家、どの手放し方から試すかの図。「複数の業者に当たって、値段がついた?」はいなら、仲介業者に依頼して売る・買取業者に売るを比べる。いいえなら「建物を使いたい人・隣地の所有者がいそう?」はいなら、空き家バンク・0円譲渡・隣地への譲渡で引き受け手を探す。いいえなら「建物を解体でき、境界がはっきりしている?」はいなら、相続土地国庫帰属制度を法務局に相談(承認されない場合もある)。いいえなら、管理を続けながら、引き受け手を探し続ける。別枠に「まだ相続の手続きをしていない場合:相続放棄も含めて、弁護士・司法書士に相談(相続の開始を知った時から原則3か月以内)」。注記:譲る・売る前に、名義が親のままなら相続登記、共有なら共有者全員の合意が必要。

建物がまだ使える・使いたい人がいそうな家:空き家バンクと0円譲渡から

建物を残したまま手放せる方法から試しましょう。空き家バンクへの登録と0円譲渡のマッチングサービスは、並行して使えます。

隣地の所有者が使えそうな土地:まず隣地に声をかける

土地を広げたい、畑や駐車場にしたいという隣地の所有者がいそうなら、まず声をかけてみましょう。

建物を解体でき、境界がはっきりした土地:国庫帰属を法務局に相談

引き受けてくれる相手がいない場合は、相続土地国庫帰属制度が候補になります。解体費・審査手数料・負担金の合計と、持ち続ける費用を比べたうえで、解体の前に法務局に相談しましょう。

解体できない・境界がはっきりしない土地:管理を続けながら引き受け手を探す

すぐに解体できない、境界がはっきりしないといった場合は、管理を続けながら、空き家バンクへの登録や隣地への声かけを続けることになります。境界については、土地家屋調査士に確認を相談すると、相続土地国庫帰属制度を検討できるようになる場合があります。持ち続ける間の費用は前の章を、お金を払って引き取ってもらう場合は「⑥ お金を払って引き取ってもらう」の確認事項を参考にしてください。

まだ相続の手続きをしていない:相続放棄も含めて、早めに専門家へ

相続が始まったことを知ってから原則3か月以内なら、相続放棄も選べます。家を売ったり譲ったりする前に、弁護士や司法書士に相談してください。

よくある質問

0円でも引き受けてくれる相手が見つからないときは、どうすればいいですか?

建物を解体でき、境界がはっきりしている土地なら、相続土地国庫帰属制度を法務局に相談してみましょう。難しければ、管理を続けながら引き受け手を探すことになります(「状況別の選び方」を参照)。お金を払って引き取ってもらうサービスを使う場合は、名義の変更や費用の内訳を契約前に必ず確認してください。

名義が親のままでも、0円で譲れますか?

譲る前に、相続登記で名義を相続人にする必要があります(期限は「0円で譲るときの税金と費用」の章で説明しています)。なお、相続土地国庫帰属制度は、相続登記がまだでも、相続や遺贈で取得した土地なら申請できるとされています(法務省 Q&A)。

建物を残したまま、国に引き取ってもらえませんか?

できません。建物がある土地は、相続土地国庫帰属制度の申請ができないため(相続土地国庫帰属法第2条第3項)、解体してから申請することになります。

兄弟と共有している田舎の家でも、0円譲渡や国庫帰属はできますか?

家全体を0円で譲るには、共有者全員の同意が必要です(民法第251条も参照)。相続土地国庫帰属制度も、共有の土地は共有者全員が共同で申請する必要があります(相続土地国庫帰属法第2条第2項)。話がまとまらない場合は、「共有持分だけを売る方法」も参考にしてください。

田舎の空き家を持っているだけで、どのくらい費用がかかりますか?

家ごとに違うため、一概には言えません。固定資産税は、毎年届く納税通知書の課税明細で確認できます。免税点に満たず、かからない場合もあります(地方税法第351条、前の章を参照)。税金のほか、草刈り、見回り、保険の費用も書き出して、解体費・負担金・登記の費用など手放す費用と比べてみましょう。

この記事を書いた人

出口ガイド編集部 不動産業界20年以上。売買仲介・買取・収益物件・賃貸管理・ファンド運用に携わる。

宅地建物取引士公認 不動産コンサルティングマスター賃貸不動産経営管理士管理業務主任者
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